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3/12/2023, 11:38:36 AM

【もっと知りたい】

あいにく私は視力が悪いので、眼鏡をかけている。
眼鏡をかけ続けるのは慣れているが鼻筋に痕が残るし、耳が痛くなるから、普段は外している。
(コンタクトは恐れ多く、手が出せていない)
眼鏡をかけたとき、私の世界は変わる。

川の濁り、その奥に潜む川底の土や砂利。
古びた街灯の廃れたガラス。
倉庫に積まれた、ホコリまみれの段ボール。
洋服のしわ、布に絡まる糸のほつれ。
外壁のコンクリートのシミ。
アスファルトに散らばった石の塊。
食いかけのタンポポのわたげ。
親の頬に刻まれた、ほうれい線。

裸眼で見えないものが、すみずみまでハッキリ見える。普段は、特に意識して見ないような箇所を気にしたり、新しい発見があったり、知らなかった景色に気づける。
(なので、視力が悪いことを後悔することも多い)
中には、あまり見たくはないものが見えてしまうこともあるが、それらを引っくるめた全てが私達の世界だ。

眼鏡のレンズを吹きながら、その先に見える様々な景色に想いをはせる。知らないものをもっと知りたいから。
今日も、私の代わりに映してくれないか。

3/11/2023, 1:53:33 PM

【平穏な日常】

早朝に起きて、ごはんを食べて、背伸びをして、
外に出て、自転車をこいで、教室に入って、
あくびをして、授業を聞いて、居眠りして、
昼頃に起きて、ごはんを食べて、首を回して、
外に出て、運動して、疲れはてて、
家に帰って、おかしを食べて、宿題をして、
ごはんを食べて、夜更けに眠って……

ざっくりとした平日のルーティーンは、こんな感じ。
ありきたりな学生の日常かもしれない。
ただ"平穏な"日常といわれると、少し違和感がある。

こうして、なにげなく毎日を過ごしている間にも、頭の中では、たくさんの思い出や考えが浮かんでは消える。それなのに小さな心配や悩み事は浮かんでも、なかなか消えてはくれない。それらは、脳内にしっかり留まり、やがて大きな不安へと変わってしまう。
どちらかというと、日々の大半は物騒なことを考えながら、過ごしている。あまり心穏やかなものではない。

ただ意識してみないと、案外その不安とやらは、私自身の中に溶け込んでいて気づきにくい。だからこそ、日常を"平穏な"と形容することができるのかもしれない。

3/10/2023, 2:58:13 PM

【愛と平和】

できる限り多くの人々にアイスを好きになってほしい。
そう思って、個人で「アイス屋」を開業した。
ここには、数多の種類のフレーバーがそろっており、様々な年齢層のお客様がやってくる。

アイスをもらったときやアイスを食べるとき、お客様は喜びや嬉しさなどの感情を、笑顔や感謝の言葉などで、見せてくれる。人によって表現の仕方は、とても大げさだったり、控えめだったり、ほんの小さなリアクションだけの事もあったりと十人十色だ。
皆の反応の違いが面白くて、気づいたら、自然と笑顔になっている。この瞬間が大好きだ。

「愛す屋」は、今日も"愛と平和"で成り立っている。

3/9/2023, 2:41:18 PM

【過ぎ去った日々】

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幼稚園の頃、よく友達と「泥団子」を作った。
誰が一番きれいに作れるか、競いあってたなぁ。

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小学生の頃、よく友達と下校時に「お荷物ジャンケン」をした。
ジャンケンに負けた奴が全員分のランドセルを持って、次の信号機か電柱がある場所まで運ばないといけない。
今思えば、ふざけた遊びだけど、なぜか盛り上がって、毎日のようにやっていたなぁ。

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中学生の頃、よく友達と休み時間に「陣取りゲーム」をした。
ジャンケンに勝つと、陣地を一マス自分の色でぬって、それを繰り返して陣地の数を競う遊びだ。
一時期、ジャンケンに勝ちまくって無双してたなぁ。

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高校生の頃、よく友達と放課後に「カラオケ」をした。
一緒に有名なアニソンとか大合唱したなぁ。


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昔は、友人とバカみたいに騒ぐだけでも楽しかった。
今でもそうなんだけど、昔ほど頻繁には会えない。
昔のように遊びたいけど、もう遊べない奴もいる。


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ページをめくり、手を止めた。


そこには、何も書かれていなかった。
これから書くのだ。今日の出来事を、忘れない内に……日記は、どんな思い出も大切にしまっておけるから。
「今日も、明日になれば、過去になる。」
そんな言葉があるように、どうやっても過去になれば、思い出すか、忘れることしかできない。同じ思い出を、二度も経験することはないし、二度も経験できるなら、やがて"過ぎ去った日々"の価値は薄れていくだろう。
だから、きっと、これでいいのだ。
今日は、まだ、そう思うことにする。

3/8/2023, 2:03:07 PM

【お金より大事なもの】

私が「お金より大事なもの」と聞かれて、真っ先に思い浮かぶのは、私だけの大切な人だった。
その人は、いつも私の話し相手になってくれる。
ちゃんと顔を合わせて、目をそらさずに。

その人は、いつも私の話を親身になって聞いてくれた。どんなに、つまらないジョークや愚痴だとしても、真剣に顔を合わせ、目をそらさずに耳を傾けてくれた。
時には、寄り添い、深くうなずき、共感してくれた。

「いつも、よく頑張ってるね!」
「本当にえらいね!」
「無理は禁物だよ!」

いつも笑顔で私のことを励まし、勇気づけるための言葉をかけてくれた。
それだけで、私は毎日をハッピーで過ごせる。


通知をタップしてメッセージアプリを開くと、友人から「どこか、遊びに行こう!」とメールが届いていた。
「OK。どこに行く?」と返信をする。
メッセージアプリには、他にも家族や部活動仲間など、交友関係にある人々のアカウントがいくつかある。
ただ……この中に、私だけの大切な人の名前はない。
あの人には、いつでも会いたいときに会えるのだから、メールでのやり取りなんて必要ないのだ。


朝起きて、顔を洗う。
あの人は、いつだって私の側にいる。すぐ側に……
顔を上げると「お金よりも大事なもの」と目が合った。

「おはよう。今日も最高に活かしてるね!」

今日も鏡の中で、私"だけ"の大切な人が笑っている。

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