4/12/2023, 1:48:17 PM
「懐かしい…」
引越しの荷造りの最中、棚の奥から出てきたのは、色とりどりの折り紙。
小さい頃、よく紙飛行機を飛ばして遊んでいたことを思い出す。
『どっちが遠く飛ばせるか勝負ね!』
そう笑う君の顔を、私は今でも忘れられていない。
君がいなくなって15年。
もう、社会へ出る歳になってしまった。
体の弱かった君の家に毎日通って、遊んで。
私の毎日に、君は絶対だった。
忘れられるはずなんてないんだ。
私はずっと、どうしようもなく君が好き。
君が毎回絶対に譲らなかった青色の折り紙。
毎回それしか使わないから、袋の中に残っていた青色はたったの一枚だった。
その一枚を取り出して、半分に折る。
15年ぶりでも、折り方は忘れていなかった。
完成したそれを手に、部屋の窓を開ける。
届け、遠くの空まで。
____君まで。
1機の青い紙飛行機は、空の青へと溶けていった。
__遠くの空__
4/11/2023, 1:53:30 PM
4月9日、入学式。
その人は桜の木の下、体に合わないブカブカの制服を着て立っていた。
色素の薄い髪の毛に木漏れ日が揺れ、その儚い雰囲気に私は息を呑んだ。あの時トクンとなった心臓の音がなんだったのか、当時は分かっていなかったけれど、きっとあれは恋の音だったのだと思う。
式が終わり、クラス名簿を見ながら教室へ向かった。隣の席に座る君を見て、私は声をかけずにはいられなかった。
「あのっ…」
自己紹介とか、質問とか、話せることなんてなんでもあったはずなのに、言葉にできなかった。
話しかけておいて黙る私に、君は優しく笑った。
「一年間、よろしく。」
___言葉にできない___