まだ学生の頃、
あなたはズタボロになった心を抱えながら
私に笑いながら悩みを打ち明けた。
あなたに襲いかかった出来事を話しているうちに、
あなたは隠した本音を零して泣いた。
あなたの涙をひとつひとつ辿っていたら、
いつの間にか私も泣いていた。
女子高校生ふたりが学校の屋上で泣きじゃくっていた。
乾きそうな涙を拭って、私はあなたの手を取り強く握った。
誰よりも優しいあなたがこれ以上辛い思いをしてしまわぬよう、
心の底から願っていた。
そう考えているうちに、また泣いた。
ふたり泣き腫らしたあと、
「ありがとう」って言われたことを覚えてる。
何年か前、
仕事をしている最中に
突然の連絡を受けた。
病院に駆け込んで、息を荒らしながらあなたに会いに行った。
あなたが倒れたと聞いた時は
絶望感を否めなくて、学生の頃みたいに焦りに焦っていた。
あなたはベッドに力無く倒れていたが、
笑顔を絶やさず私と接した。
無理して笑っているのをわかってしまって、つらかった。
あの時みたいに泣いて欲しかった。
ただ私に辛く感じたことや嫌だと思ったことを打ち明けて欲しかった。
ただ体が回復するのを願ったが、もうその願いは遅かった。
医者によると、頑張っても一日持つかどうかだった。
時間が経つ度弱っていくあなたの手を握ると、
涙が止まらなくなった。
子供に戻ってしまったみたいに声を出して泣いていた。
そんな私にあなたは手を握り返してきた。
生と死の境目に、私たちは初めて手を取り合っていた。
息をするのも苦しそうなあなたは、最期に言葉を放った。
「ありがとう」って。
『手を取り合って』
褒められる度に優越感に浸った。
本気で「そんな事ない」って思う事が出来ない自分に、
どうしようもなく腹が立った。
でも、褒められることが無いのなら物事を続けることは出来なかった。
好きな事をやって、勝手に劣等感を抱いた。
誰かに何かを言われたわけではないのに、
自分には才能がないって強くつよく思い込んだ。
その時間が、片隅では辛く感じていた。
そんな自分に、私は嫌悪感を抱いていた。
『優越感、劣等感』
これまでずっと、 耐えてきた。
貴女に振られてから、連絡もとれず苦い思いをした。
いつかやり直せたら。そう思い続けていた。
依存してしまったという罪悪感に覆われるけれど
私に依存をさせたのは他の誰でもない貴女だった。
貴女と復縁をする夢を見た。
気持ちが整っていく気がした。
やっと落ち着いて言える気がする。
これまでずっと、大好きだった。
『これまでずっと』
雨の中なんとか家に帰ると、スマホに一件のLINEの通知。
わたしの好きな人からだ。
LINEを交換しただけでほとんど会話もしなかったのに、
「雨大丈夫?」って。
あなたのおかげで大丈夫じゃなくなりそうです。
『1件のLINE』
目が覚める。
スマホの画面をぼうっと見ると、メッセージの通知が一件。
懐かしいあの人からのメッセージで、胸が高鳴る。
メッセージの内容は「やり直したい」、だとか。
色んな思いがひとつのメッセージに必死に打ち込まれていた。
嬉しさで、胸がいっぱいだった。
涙が溢れ、「うれしい」と感情そのままに打ったメッセージを送信した。
そしたらまた、目が覚めた。
『目が覚めると』