まだ学生の頃、
あなたはズタボロになった心を抱えながら
私に笑いながら悩みを打ち明けた。
あなたに襲いかかった出来事を話しているうちに、
あなたは隠した本音を零して泣いた。
あなたの涙をひとつひとつ辿っていたら、
いつの間にか私も泣いていた。
女子高校生ふたりが学校の屋上で泣きじゃくっていた。
乾きそうな涙を拭って、私はあなたの手を取り強く握った。
誰よりも優しいあなたがこれ以上辛い思いをしてしまわぬよう、
心の底から願っていた。
そう考えているうちに、また泣いた。
ふたり泣き腫らしたあと、
「ありがとう」って言われたことを覚えてる。
何年か前、
仕事をしている最中に
突然の連絡を受けた。
病院に駆け込んで、息を荒らしながらあなたに会いに行った。
あなたが倒れたと聞いた時は
絶望感を否めなくて、学生の頃みたいに焦りに焦っていた。
あなたはベッドに力無く倒れていたが、
笑顔を絶やさず私と接した。
無理して笑っているのをわかってしまって、つらかった。
あの時みたいに泣いて欲しかった。
ただ私に辛く感じたことや嫌だと思ったことを打ち明けて欲しかった。
ただ体が回復するのを願ったが、もうその願いは遅かった。
医者によると、頑張っても一日持つかどうかだった。
時間が経つ度弱っていくあなたの手を握ると、
涙が止まらなくなった。
子供に戻ってしまったみたいに声を出して泣いていた。
そんな私にあなたは手を握り返してきた。
生と死の境目に、私たちは初めて手を取り合っていた。
息をするのも苦しそうなあなたは、最期に言葉を放った。
「ありがとう」って。
『手を取り合って』
7/14/2023, 10:39:44 AM