Haru

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3/21/2024, 1:56:45 PM


幼い頃、大好きだった母を亡くした。
その後父と2人で生活していたものの、母を亡くした反動で塞ぎ込むようになった私に最初はどうにか元気づけようとしてくれた父も、段々と声をかけなくなっていた。

終いには私が寝る時間を見計らって知らない女を家に連れ込んでいた。別の部屋にいても耳を塞いでも聞こえてくる交合の声。

1人になりたかった。

大好きな母は死んで、母が愛した人は別の女を毎晩連れてくる。

塞ぎ込むようになってから学校に行けていなかった私は人との関わり方なんて忘れていて、今通っている高校でも友達なんていなかった。

母の命日も忘れて遊び呆ける父に嫌気がさした私はある日父にメールを残し、行先も知らないバスに乗り込んだ。

『お父さん、今までありがとう。しばらく帰らないと思うけど、気にしないで。急にごめんなさい。』


外の景色をぼーっと眺めながらこれからどうしようかと考える。とりあえず、1人になりたい。そう思いながらバスに揺られているうちにいつの間にか眠っていたらしく、バスは終点に着いてしまった。

バスを降りて辺りを見回すとそこは全く知らない土地で住んでいたところより緑が多くて空気が美味しかった。

バス停の近くに公園があったため、ベンチに座って夜空を眺める。今夜は綺麗な満月だった。しばらく月に見とれていると、

「にゃーん」

猫の声が聞こえてきた。辺りを見回すと猫は私と同じように、ベンチに腰かけていた。

「あなた、どこから来たの?」
「にゃーん」
「家族はいるの?」
「にゃーん」

この子は人間の言葉が分かるのだろうか。私には猫の言葉なんてさっぱり分からない

「あなた、1人?」
「にゃぉーん」

猫の言葉なんて分からないけど、鳴きながらこちらをじっと見つめてくる猫はまるでそうだと肯定しているようだった。

「私もね、1人なんだ。一人ぼっち。」
「にゃーん」
「私たち、似てるね」
「にゃーん?」

やっぱり、人間の言葉は分からなさそうだった。何言っているのか分かってなさそうな返事が返ってきてそれがなんだか可笑しくて。


まだ少し肌寒い春の夜の月明かりの下。
猫と私。二人ぼっち。



━━━━━━━『二人ぼっち』

”最後まで読んでくださりありがとうございます”

3/20/2024, 4:36:52 PM

夢が醒める前に言わないといけない

君とまた出会えることはもう無いと思うから
6:00になる前に伝えないと

明日にはまた、姿が変わってしまう

僕は夢の中の重要人物で、毎晩君が考えた登場人物になって夢の中のストーリーを君と作り上げているけど、君の考えているシナリオに不満がある時は無理やり僕が方向性を変えるせいでカオスになったりもする。

先月は初恋の先輩から告白されたいというシナリオを押し退けて先輩が総理大臣になる夢に変えちゃったっけ。

昨日の僕は君にとって1番のトラウマのピエロで、怖がらせてしまったりと嫌な思いにさせちゃうことも多いけど

今日の僕は『君にずっと前から恋している1人の青年』

タイムリミットまであと3分

君の好きな人の姿になったり、推しのアイドルの姿になったこともあったっけ。

君は夢の中だけでもと大胆にアタックしてきたり、僕の気持ちを聞き出そうとしてきていたけど、僕は無理やり夢を変えたり、タイムリミットまで時間を稼いだりとのらりくらり躱してきたね。

だけど、最近の君の考える夢は真っ暗闇や怖い夢ばかりで、現実で上手くいっていないのかなって勝手に思ってる。

久しぶりに見た、少女漫画にあるような校舎。
今はもう放課後で、太陽も西に傾き始めてる
いつも夢の最後には放課後2人きりで教室に残っているけど、このシチュエーションで告白されるのが夢なのかな?


こんな事を考えていたら残り時間はあと1分

いつも避けてきた分、忘れられると分かっていてもなんだか緊張する

大きな深呼吸をして、君の名前を呼ぶ。
振り向いた君に向かって僕は口を開いた。


『貴方のことがずっと前から好きでした。』

______________________________


ピピピピピピピ

うるさい目覚まし時計を止める。彼に返事をする前に目覚まし時計に起こされてしまった。もう一度寝てみようかとも考えたが頭は完全に冴えているため仕方なく朝食を食べにリビングへと向かう。

「あら?今日は寝起きがいいんじゃない?いい夢でも見たのかしら?」
キッチンから母の声が聞こえてくる
「うん、久しぶりにいい夢が見れたの。えっとね…」
忘れる前に母に話そうと思っていたが、もう彼の名前も、顔も声もハッキリとは思い出せなくなっていた。

「忘れちゃった笑」

もしまた同じ夢が見れたら、その時は夢が醒める前に君に想いを伝えるね。



『夢が醒める前に』

”最後まで読んでくださりありがとうございます”

3/19/2024, 12:58:09 PM


声が聞こえるだけで嬉しくて。

授業のない日もたまに話しかけてくれたり、
貴方に少しでも近付きたくて始めたゲームの話で盛り上がったり。
頑張った分沢山褒めてもらえると、その度に胸が高鳴る。
その分他の子とも楽しそうに話してるのが聞こえてくるとモヤモヤしたり。

ダメなことはわかってるけど

私、先生に恋してるんだ

3/17/2024, 4:45:14 PM


来月には高校3年生になる私。
もう学校や塾では来年の大学入試に向けての準備が始まってる。
高校に入った頃からここに行けたらいいかなくらいで適当に選んでいた大学だったけど、今になって初めて行きたいと思える大学を見つけた。

高1は半分不登校、高2はその影響もあって下から数えて10番以内に入る程の頭の悪さ。その大学は私のレベルじゃ到底届くわけなくて、そこを目指して勉強しようって決めた1週間後の今にはもう諦め半分だった。

友達に雲の上の存在だよねーって、笑い話のつもりで志望校についての話をしたら「まじで応援してる。今からやれば間に合うんじゃない?」って言ってくれて。笑

こんな返事かえってくると思わなかったから、思わず涙が零れそうになった。
でも泣く時は今じゃない。合格発表の日、受かっても落ちても、私はきっと泣くはず。
だからその時まで泣くのはお預け。

嬉し泣きできるように、もう少しだけ頑張ろうね、私。