[子供のままで]
僕には昔から、仲良くしていた女の子がいた。
その子の前なら"素"が出せる、それぐらい信頼して、信頼されていた。
でも、年々僕らも大人になっていく。女の子は女の子同士、男の子は、男の子同士。女の子と男の子が一緒にいるとカップルかのように思われ、からかわれる。
僕はからかわれるのが嫌というのと目立つのが尚更嫌いなので、その子とはメールでやり取りしている。
でも、最近はしてないな。と思い、緊張ながら指を動かす。
『最近どう?』
入れては消して…なんか今日はやたら緊張する。
うーんと悩むこと、10分。
結局打つ事をやめる。もういいや、明日やればって。
そんなこと続けて数日。
携帯が鳴る。メールだろうか。
僕が携帯を見ると、彼女からだ。
『最近元気ない?もしよかったら話ぐらいは聞くよ〜、昔みたいに頼ってね。』
と。
久しぶりの連絡に驚くと同時に、気付かれてたんだな。と照れが入る。
僕は、
『大丈夫…とまでは言えないから少しだけ、メールで話してもいいかな。』
と返信した。
『優しさだけで、きっと』
「でさ〜、○○っていうアイドルがさ〜………ねぇ聞いてる?」
友達のいつものアイドルの話。私は全く興味がないのだが、とりあえず話だけでも合わせる。
「聞いてるよ〜。最近テレビよく出てるよね〜、なんと言ってもさー」
と流す。流石に"仲間はずれ"まではしないとは思っているけど、何かあってからは手遅れになる。だからテレビも見る。そのアイドルを追っているかのように。
「…いいよね〜。……あっ、そろそろ授業かも。」
「…そうだね。私、次の授業移動だから。」
と席を立つ。
「了解!授業終わったら食堂でね。」
と友達。
はーい、と言い、私は今いる教室を出る。
しばらく歩くと。
「おーい!」
と次の授業を一緒に受ける子。
「あっ!おはよ〜…とはもう遅いか。」
「いやいや、まだ朝…のはず!」
と他愛のない話をしながら歩いていると、
「最近寝れてる?疲れてそうだけど。」
え?と私は困惑。
「いやいや!大丈夫、大丈夫!」
と大きく見せた。
「ん〜?そうかな…?私と一緒の時ぐらい"素"を出してくれていいんだよ?」
と言ってくれた。
「これが普段だよ〜!流石に人によって態度変えてたらしんどくなるって。」
と笑って誤魔化した。
私は正直、あの言葉はとても救いと同時に不安も溢れた。
『同情』
僕は散々と言われるほどの家庭で育った。
「大変だったね」
という大人たち。
"大変"という一言で今までの自分の行動がひとつにされるぐらいなら同情なんていらない。
『星になる』
最近、光が痛い。
街灯の下を通るたび、胸の奥を針で刺されるみたいに息が詰まる。スマホの画面を開くだけで目を細めてしまう。きっと疲れているだけだと自分に言い聞かせてきた。
名前を呼ばれなくなったのは、いつからだっただろう。
会話は私を避けるみたいに流れていって、気づけば相槌を打つ必要すらなくなっていた。誰かが笑うたび、私は少しずつ、薄くなる。そんな感覚だけが、やけに確かだった。
夜、洗面所の鏡を覗くと、瞳の奥に小さな光が浮かんでいた。
星みたいだ…
なんて思う自分…笑えなくなる。
星は綺麗だ。でも、触れられない。
ああ、そうか。
私はもう、星になる準備をしている。
夜風が冷たい。
それなのに、身体の感覚はもうほとんど残っていなかった。指先から順番に、私じゃないものに変わっていく。光だ。重さのない、名前を持たないもの。
見上げた空は、思っていたよりずっと高かった。
星は綺麗だ。誰にも邪魔されず、誰にも触れられず、ただそこにあるだけで許されている。
――いいな
と思ってしまった。
そのとき、背後で誰かが私の名前を呼んだ気がした。
振り返れば、きっとまだ間に合った。
でも私は、もう振り返らなかった。
星になるって、こういうことなんだと思う。
誰にも必要とされなくなって、やっと静かになれる。
その夜、空に星がひとつ増えた。
それが私だったことを、知る人はいない。
『贈り物の中身』
「今年のさ、クリスマスって何か予定ある?」
彼氏のいない歴=年齢の私に尋ねる幼なじみ。
「ないよ。多分バイトだろうし。」
私は携帯に入っているスケジュール帳を見る。
…水曜日。バイトはない。
「ごめん、バイト休みだったわ」
「そうなの?ならさ、イルミネーション見に行かない?」
私はギョッとした。
幼なじみは外に出るのがあまり好きではない。なのにこんな提案をしてくるものだ。
「え!?ま、まぁいいけどさ。」
私は特に何も無いし。
当日。
…やっぱり十二月って寒いな。
しかもイルミネーションだから夜じゃないと綺麗じゃないし。
どこを見ても彼氏・彼女ばかり。…完全に浮いちゃってる、私。
「あっ、いたいたー!」
幼なじみが息を切らしながら来た。
「…別に今来たばりなんだから、走る必要ないよ。」
「一緒に回る時間、多く取りたいし。」
「そう?」
うん!と頷く幼なじみに。
「あのさ、今日…ちょっとした物だけど。」
と私は幼なじみにネックレスをプレゼントした。
「え?いいの!?これ欲しかったやつ!」
「良かった。まぁ…もう少しバイトしてたらいい物買えたかもだけどさ。」
そういう私に幼なじみはきょとんとした。
「…いい物って何?」
「え?それは…ブランド物とか?」
ちがうよ〜、と幼なじみ。
「こういうのって、気持ちだから。だって、仮に安いものでも貰い物って嬉しいもんなんだよ。」
と言い、幼なじみが私に箱を渡す。
「プレゼント!用意してたんだ!」
え…と思い、箱を開けるとまさかの同じネックレス。
「嬉しくない?全く同じものだけど。」
私は首を横に振って
「ううん、とっても嬉しい。」
良かったと微笑む幼なじみ。
「それじゃ、行こっか!」
と二人、同じネックレスを付けて歩き出した。