「愛してる」
今日も彼女だけに捧げる愛の言葉。
でも彼女ってば照れ屋さんだから一言も返してくれない。
酷いなあ、と思わないことはないけれど、思ってもない言葉を無理強いは出来ない。
それでも、可愛い可愛い彼女が大好きだ。
明日も彼女だけにこの言葉を捧げよう。
いずれ彼女が目覚めてくれる事を祈って。
『愛言葉』
「んじゃ!また放課後校門であおー」
と手を振って去っていく私の友達。親友と言ってもいいのかな。
「うん、また」
と脇腹の位置で小降りに手を振って返す私。性格が真反対なのに友達として付き合ってくれている彼女は本当に優しい。また放課後も彼女と話せるかと思うと心が踊る。子供みたいにわくわくする。なんでこんなにわくわくするんだろう?
答えはすぐ出た。彼女のおかげだからだ。
そうして私は教室に戻る。教室の扉を開けて──
ぱち。
目が覚めた。おはよう、なんて言う相手も言ってくれる相手もいない。なんて悲しい現実。こんな現実捨ててすぐにまた夢の中へ戻りたい。幸せだったな、夢の中は。どうして夢は必ず覚めるんだろう。誰が決めたんだ。決めた奴に出会ったらどうしてやろうかと考えながら今日も一日が始まった。ゴミみたいな一日が。人類滅べばいいのに。なんで滅ばないんだ。どうせAIに支配される世の中が来るんだから早めに滅べ人類よ。滅ばないんだったら私に可愛くて優しい友達を下さい神様。自分で作れとか言わないでください。
クリスマスにも誕生日にも友達くれないとかどうかしてます神様。
ああ、今日こそ可愛くて優しい天使のような友達が出来ますように。
『友達』
「行かないでよぉ」
私は泣きながら必死に彼女を引き留めようとする。無駄なことは知ってる。でも悪足掻きくらいしたい。その悪足掻きで彼女を引き止めれるのなら幸せだから。彼女を困らせるのは分かってる。でも、それでも行かないで欲しかった。
彼女は困った顔をしながら私の頭を撫でる。優しく、優しく。落ち着かせるように。彼女の手はあたたかい。大好きな手。ずっと撫でて欲しい。
そのあたたかな手で私を撫でながら彼女は言う。
「ごめんね、どうしても外せない用事なんだ。明日は1日一緒に居れるから、お留守番しててくれるかな?」
少し申し訳なさそうだった。彼女が申し訳なくなる事なんて何も無いのに。
「おるすばんしてたら、あした、いっしょ?」
ぐすぐすして聞き取りにくいし、しかもほとんど文章ではなく単語で言ってしまったけれど、それでも彼女は優しく受け止めてくれる。
「うん、そうだよ。だからお留守番してて?ね?」
いい子の君なら出来るよ、と付け加えて。
褒められながらお願いをされるとどうしても聞いてしまう。
しかも彼女からのお願いだ、これ以上困らせてしまう訳にはいかない。
彼女の言う「いい子」の私なら出来ると自分に言い聞かせ、
「ん、わかった、あした、ずっといっしょだよ?」
と小指を突き出す。約束でもしてもらわないと安心できない。約束してもらっても完全なる安心など出来ないが。
「うん、分かったよ。明日何して遊ぼうか。考えて待ってくれてると嬉しいな」
彼女は言いながら小指を絡めてくれる。
絡めた小指を数回上下に振って
「ゆーびきった!」
そして絡めていた小指を離す。
もう一度私の頭を撫で、
「行ってくるね」
とドアを開け彼女は出かけた。
「行ってらっしゃい」っていえなかったな。
『行かないで』