「高峰って分かりやすいよね」
「え、なに、急に」
「別に〜」
私の斜め前に座る高峯は、授業中も、窓際を見ているような奴だった。
窓際にいる私の親友のことを、飽きもせず、ずっと見ているような奴だった。
そんな高峰の背中を、私はずっと見ていた。
「湯原はさ、めっちゃ寝てるよね」
「失礼だな、寝てないよ」
「あんなに机に突っ伏してるのに?」
寝たフリ、してるだけだよ。
なんて、高峰には絶対に言えないけれど、
それでも、寝ていると思われていて安心した。
「高峰は、ずっと窓際見てるよね」
「なんで知ってるの」
「だから寝てないって言って....」
そこまで言って、私は大切なことに気がついた。
「なんで私が机に伏せてるの知ってるの?」
私はずっと、窓際を見つめる高峰の背中を見ていた。
高峰は、私に背中を向けているはずなのに、どうして?
「あー、今のやっぱなかったことにしていい?」
「いやいや、え、どういうこと?」
疑問だらけの私を見つめて高峯は、耳を触った。
「窓に反射してるからじゃん、湯原が、」
耳を触るのは、照れた時の高峰の癖だった。
《これまでずっと》
「あー、私の彦星様はなんで迎えに来てくれないの!」
「彦星様って...」
と、隣で苦笑するこいつは、私の幼馴染の久我悠真。
「大体、彦星様に会いたいなら、毎日毎日俺の部屋に入り浸るなよ」
「どうせ暇なくせに!というか、そっちが女避けしたいとか言ってたから私は!」
そこまで言って、私は大きなため息をついた。
悠真は、昔から嫌な程にモテていて、私は、悠真と幼馴染だということを羨ましがられて生きてきた。
「悠真と幼馴染やめたい」
「お前なあ〜」
幼馴染という肩書きは、私にとっては、酷だった。
1番近くにいるのに1番遠い存在だったから。
「俺だって、お前と幼馴染なんて辞めたいよ」
「そうだよね、ごめん、帰るね」
急に笑わなくなった悠真を見て、失敗したと思った。
私と悠真の辞めたいは違う意味だと分かったから。
バッグを、握りしめて今にも泣きそうな気持ちを必死に抑えた。
「俺は、お前の彦星様になりたいんだよ」
「...え?」
「キャラじゃないから言わせないで、ほんと」
見たことないほど顔の赤い悠真につられて私も顔が熱くなるのを感じる。
「なんで顔赤いの、悠真、」
「うるさい、返事、くれないの?」
「そんなのっ..!」
もう、分かってるくせに
《七夕》