"木枯らし"
木枯らしは冬のはじまりを告げて、春一番は春のはじまりを知らせる。
冬のはじめ頃って何してたっけ……。
仕事内容でしか思い出せないのって悲しいね……。
そういえば、木枯らし1号が気象庁から発表されるのは東京地方と近畿地方だけなんだよな。
春一番は北日本を除く8つの地域で発表される。
地域によって発表される事項が違うのは面白いよね。
"この世界は"
生きたいと言う人が、昔からよく分からなかった。
その人にとって、この世界は執着するに足るなにかがあるのだろうか。
強烈な生への渇望、生き足掻くための原動力。
あると胸を張って言えるのなら、いいなぁと思う。
そんなものがあって、大切にできるなんて。
物語みたいじゃん、夢があるよね。
"夢を見てたい"
人の気持ちはその人自身のものだからどう思っていようが構わない。
そう思うけれど。
でも、貴女に関してだけは。
隣で笑っていた貴女は幸せだったと、そう夢を見てたいよ。
"ずっとこのまま"
通勤時に横を通りがかる駐車場の端っこには、猫の足跡が点々と残っている。
コンクリートが乾く前に上を歩いたんだろうな、と見る度に和む。日々の癒しだ。
駐車場の持ち主には悪いけど、出来ればずっとこのまま残しておいてほしいなぁ。
"20歳"
"子供ひとり育て上げるのにどれくらい費用がかかると思う?"
一時的にお世話になっていた施設を出ることになった際、最後に職員さんと話をする時間があった。
その時に言われた言葉だ。
院長と話す祖父母だという人達を遠目に眺めていた僕をひょいと抱え上げ、真っ直ぐに視線を合わせて、職員さんは言った。
"君一人を養うために、あの人たちがこれからどれほどの時間と金を費やすことになるのか分かるか。
どうしたって何かを諦めなければならないし、当然手に入るはずだったものは手に入らない。
いいか、そうさせるのは、君だ。
君が、あの人たちの可能性を喰い潰すんだ。
君が享受するのは、無償の施しではない。
当たり前のことでは決してない。
君がこれから得る全ては、あの人たちの血肉を喰らい、自由を、可能性を奪い取って得るものだと知りなさい"
"それでも、あの人たちは君を引き取ることを決めたんだ。
その心を無駄にすることは許されない。
衣食住、学費、その全ては君が負うべき負債だ。
君が望むが望むまいが関係なく、それらを返しきるまでは君には生きる義務がある。
だから、自分には生きる資格がないとか、死ぬべきだったとか、今更うだうだ考えるな。
自分の為には生きられないというのなら、あの人たちに恩を返すために生きなさい"
死者の分も背負って生きろと言われるよりも、
子供らしく厚意に甘えて生きなさいと言われるよりも、自分が周りに与える不利益を返済するまでは死ぬなと言われる方が、ずっと分かりやすくて。
正直、その言葉に縋っていたところがあったんだよなぁ。
だから、20歳の頃。
祖父に今までにかかった費用の返済を申し出て。
そして、烈火の如く怒られた。
怒られたし、殴られたし、泣かれた。
お前は今まで俺等のことをなんやと思ってたんや、と。
結局お前と俺等は他人でしか無いんか。
金銭のやり取りで精算できるようなやっすい繋がりしか持てんかったんか。
俺等は、お前の家族にはなれんかったんか、と。
あれはキツかったなぁ。
祖父が思うような意図はこれっぽっちもなくて。
ただ、負い目をなくしたかった。対等に見て欲しかった。ただそれだけの浅い思いで、それを言われた彼等がどう思うかなんて一切考えていなかった。
自分のことばっかりで、彼等の想いを無惨に踏み躙って、傷つけて。
本当に馬鹿だったなぁ、とあの頃の自分に思う。