"パラレルワールド"
今この世界に自分が一人いるだけでも多すぎると思うのに、さらに並行世界の数だけ無数の自分がいるなんて考えるとゾッとする。
精神衛生上、あんまり考えたくないなぁ。
でも、貴女が元気に笑っている世界線は何処かにあってほしいと思うんだよな。
"僕と一緒に"
"時計の針が重なって"
記念日には毎年花束を購入する。
お陰で、花屋の店主とはすっかり顔見知りになってしまった。
毎回の冷やかしの言葉を軽くかわして、受け取った花束に頬を緩める。
色とりどりの、繊細で複雑な色合いのさまざまな花々。
花束の彼女によろしく、とニヤニヤしながら言う店主に苦笑して、店を出た。
花屋の店主には貴女のことを伝えていない。
今後も明かすつもりは無い。
お決まりの弔花よりも、幸せや喜びを思って作ってくれる花束の方が良いだろう?
"『ずっと』や『一生』でまとめないで。
毎年、ちゃんと言葉を頂戴"と貴女は望んだ。
だから記念日にはいつも、
"次の一年も僕と一緒にいて下さい"と、言葉と花束を贈った。
嬉しそうに頷いて花束を抱きしめる、貴女のその笑顔が好きだった。
時計の針が重なって、
今年もまた貴女との記念日を迎えた。
写真の中で笑う貴女に、花束と共に約束の言葉を贈る。
少しだけ形を変えた、誓いの言葉。
これから先も、僕が生きている限り、一年の約束を何度だって貴女に捧げ続ける。
"cloudy"
灰色の濃淡をつけた雲が空を覆っている。
雲を透かすように見える太陽の周りには、ぼんやりと日暈(ハロ)が浮かんでいた。
氷晶のプリズム効果で生じる虹色の光の輪。
色や形によって様々な言い伝えがあって、七重の暈は世界が滅びることを意味する、なんていうものもあるらしい。
七重の暈はきっと綺麗だと思うけどな。
"虹の架け橋🌈"
虹と架け橋なら、五月の花札として知られている
"菖蒲と八つ橋"の組み合わせだ。
菖蒲(アヤメ: iris )、特に色とりどりの花を咲かせるジャーマンアイリスは虹の花とも呼ばれているし、八つ橋は数枚の橋板を向きを変えながら継いで架け渡した橋のこと。
ただ、花札の菖蒲はおそらく杜若なんだよな。
アヤメは水辺には咲かないから。
アヤメとハナショウブとカキツバタってよく似ているんだよなぁ。
まぁ花札の時は菖蒲の方が通りが良いからそう言うけど。往々にしてそういうものだよね。
"既読がつかないメッセージ "
既読がつくような媒体でのメッセージって大体が仕事関係だから、ある程度時間を決めて、それまでに反応が無ければ諦めて電話しちゃうな。
先方にも、急ぎの場合は電話して下さいと伝えるようにしている。
でもなぁ。
栗ご飯がもうすぐ炊き上がるという時に、トラブルが起きたから今すぐ来て下さいとメッセージを送られても困るんだよな。
放置していたらメッセージ連投の後、鬼のように電話がかかってくるし、そうこうしている間にご飯は炊き上がるし。
行くよ、行くけどさぁ。
おにぎりにするからあと5分だけ待ってくれないか。