大切にしている箱の中は
誰かに見せなくてもいい
知っているのわたしの瞳
曇天の空色は澄んでいる
泣いているのわたしの瞳
ナナカマドが薄紅をさす
風がもうすぐ連れてくる
雨が上がる静けさを空に
風がもうすぐ連れてくる
今はただ此処にいたいの
何もかも忘れていたいの
『雨に佇む』
グラスの氷が
溶けて消えた
仕草のひとつ
優しい嘘なら
私は要らない
隣に居たなら
知らないまま
さようならは
雨の日がいい
あのカフェで
窓際の特等席
『向かい合わせ』
てんしる、ちしる
われしる、ししる
だれかがみている
どこかでみている
きのうのわたしも
きょうのわたしも
いつもといかける
やさしくありたい
じぶんにまわりに
ただしくありたい
じぶんのこころに
おてんとうさまを
みあげてごらんよ
まぶしくあかるい
てんしる、ちしる
われしる、ししる
『やるせない気持ち』
洋服の裾の綻び
裁縫箱を出して
針に糸を通して
ちくちくと縫う
苦手だけど縫う
縫目は美しくね
表に出ないよう
祖母の針仕事は
優しくて丁寧で
しつけ糸の白の
大きな三つ編み
するりと一本を
取り出していた
私もやりたくて
何度も絡まった
子供だからかな
大人になった今
苦手だけど縫う
祖母の大きな手
偉大な魔法使い
『裏返し』
あの大きな海の群青に抱かれて
泳ぐ魚はどんなに幸せでしょう
手を繋いで楽しそうに歩いてる
人間達はどんなに幸せでしょう
好奇心と少しの羨望を覗かせて
夢を見て飛んでいたとしたなら
不自由で自由なこの世界の中で
私はまた人間を選ぶのでしょう
空を見上げ恋しく思うでしょう
しがらみのない所で生きたいと
『鳥のように』