果てしなく離れている、
でもそばにいる。
毎日、距離をなくしていけたらいい、
切れない糸がきっと見えるようになるから。
今日の最高気温は34℃。
うだるような暑さになる前に勉強しよう、
昨日そう決めて早起きした。
4時45分。
カーテンを全開にして窓を開けるとあたたかい色をした朝焼けとすずしい風が入ってくる。
なんて素敵な朝なんだろうとおおきく息を吸い込んだ。
このすずしさと共に身支度を整えて白いテーブルに朝ごはんを並べる。
ギンガムチェックのランチマットを引いて、その上にクロワッサンとアイスカフェオレ。
ああ、シンプルでいいごはんだ。
小さなひまわりを一輪、テーブルの端に添えてみる。
そうこうしているうちにだんだん明るさを増す朝の光が窓際に置いてあるアンティークの鳥かごを照らしていた。
すずめの声も聞こえてきた。
明るい夏の朝だ。
さあ、ごはんが済んだら勉強だ。
6月の午後の昼下がり。
たらいに足を浸して涼んでいた。
ゆうびんやさんが走り去る音がした。
ポストを覗くと一枚の絵葉書。
だれからだろう?
胸をはずませながら差出人を見る。
もう会えないと思ったあの人からの手紙。
待ち合わせ場所が書いてある。
こんな嬉しい手紙がかつてあっただろうか。
絵葉書の絵の部分には、青い空、入道雲をバックに
おおきな向日葵も描かれている。
嬉しすぎて、向日葵がにっこり笑っているように見えた。
待ち合わせの7月まで、あとすこし。
なんとも言えない感情に、たらいに浸した足をパタパタさせた。
こどもみたいに。
うさぎを追いかけて走る、
どうしてそんなに急いでいるのと夢中で走った。
そして大きな穴に落ちる,落ちる。
落下しながらゆれる椅子に腰掛け読書をする。
右手でビスケットをつまむ。
スローモーションで落ちたのははじめてで、
こういう落ち方でよかったのかしらと考える。
そうこうしているうちに一番下に降り立った。
どこだろう、ここはと見渡すと、
うさぎがお茶会を開いていた。
くまさんと、りすさんと。
大きなテーブルに赤いギンガムチェックのテーブルクロス。
かごいっぱいのクロワッサン。
うさぎが「こんにちは。きみはなにをのむ?」
と聞いてきた。
答えようとすると、りすが「きみ、名前は?」
“アリスよ。”
と答えるとくまが「アリスなんてのみものあった?」
と聞くので、あわてて、“ミルク!”というと、
りすが「かわいい名前だね」
あぁもう…!
ふしぎの国に辿り着いたんだ、わたしは。
角度を変えれば楽しいことがたくさんだ。
良い思い出に変わるものばかり。
明るい夜。
夜7時だというのに空はまだ明るく、水色の空さえ見せている。
なんて明るい夜!
と胸を踊らせながら歩く。
歩いていると、ひさしぶりに見かける黒猫。
変わらずでっぷりとしていて目がまんまるで可愛い。
箱座りしている。
なんだー、生きてたんだね、元気そうだねなどと好き勝手に話しかけてしばし時間を過ごす。
そろそろおうちに帰らなくちゃねと立ち上がって歩き出す。
気付けば辺りがうっすらピンク色に。
なんて可愛い空気なんだろうと、なんとなく後ろを向いてみた。
そしたら、なんとも形容し難い綺麗な夕焼け空が一面に広がっていて、
街を見下ろせる丘まで急いだ。
写真を撮りながら、
「写真は思い出の手がかり」と言った友人の言葉を思い出した。
今日はとてもいい日だった。
神さまがくれたごほうびのような日だった。