コンビニから家までは10分ほど。
朝は混むバス通りも、この時間は車もまばらである。
スーパーはもう閉まっている。
ここらへ引っ越してから3ヶ月が経つ。
初めは、憧れた一人暮らし、炊事も頑張ろうと、ひととおり道具は揃えたが、朝はトースト、昼は社食、夜はコンビニ弁当。休日、目玉焼きを焼くくらいで、鍋はシンク下、奥の方にしまってある。
あのスーパーもしばらく行っていない。
すぐそばを車が通って、生ぬるい風が吹いていった。
空は晴れているが、都会ではそれほど星は見えない。
アルタイルとベガ、それくらいは知っている。
夏の大三角、もう一つはなんだったかな。
そんな程度だ。
子供の頃、校外学習で行ったキャンプがふと懐かしくなった。草はらに寝転んで、懐中電灯を空に向けたあの日。
あれがどこだったのかはもう覚えていないけど。
もう一度見たいな。
でもまあ、繁忙期が落ち着いたら、考えよう。
そう自分に言い訳をして、蓋をした。
考えると疲れるから。今は何も考えずに。
「星空」
今日も残業帰り。
繁忙期だから仕方ないよね。
自分に言い訳をしながら、コンビニでお弁当を買う。
値引きのシールが貼ってあるものから、テキトーに選ぶ。深く考えないでレジへ持って行く。
電子マネーで。
値段も見ずに、お会計が終わる。
カバンに入れっぱなしのエコバッグを広げる。
鶏南蛮弁当、ちょっと傾いてるけど、もう気にしない。
店員さんの定型文を聞き流して、店外へ。
街灯の灯りに、虫が集まっている。
生暖かい風。
もう夏が来ている。
視線の先に、白くふわりと動くものがある。
通り過ぎて気づく、ああ、ビニール袋か。
カサリと音を立てて、漂っている。
コンビニのロゴが、頭の片隅に残って………。
少し悩んでから、私は引き返してビニール袋を拾う。
ゴミ箱へ入れる。
ふうっとため息をついて、また歩き出す。
誰も見てやしないけどさ。
空には星が点々としている。
都会の空でも、小さく輝いている。
「神様だけが知っている」