【街の明かり】
夜道を歩いていると
不安に駆られる
得体の知れないものが
闇の中から現れないか
おかしな人がおかしな気を起こして
襲ってこないか
さまざまなことを考えるのだ
そんな時
街灯が点いているとホッとする
ぼんやりとした頼りない光だが
真っ暗闇よりはずっといい
仕事で疲れた日も
夜景を眺めると癒されるし
こうして帰り道には
私を少しだけ安心させてくれる
街の明かりは
いつも私を勇気づけ
何も言わずにただ見守ってくれている
【七夕】
どんな人にも少なからず欲があり
その願いが叶えばいいと密かに思っている
短冊に願いを書いて笹に吊るすなどという
ある意味自分の欲を公にする行事
それが七夕だ
けれどそんな風に晒せる願いなど限られている
本当に願いたいことは
心の中で天の川に向かって願うことしかできない
「宝くじが当たりますように」なんて
カモフラージュの願い事を短冊に書いてぶら下げて
心の中にはもっと大きな野望を抱き
天の川にだけ、その願いを託すのだ
【友だちの思い出】
小学生のころ
私はずいぶんと大人しい子供だった
だけどそれは本当の私ではなく
成長するにつれ
自分はお喋りな性格だと気が付いた
だから、家では家族とたくさん話していた
けれど大人を含め、周りのみんなは
私を大人しい子だと思い込んでいる
そのイメージをいきなり破壊するような勇気も
堂々としていられるような図太さも
当時の私にはなかった
だから私は
「大人しい子」として振る舞い続けた
でも、そんなある日
転校生がやって来た
その日の昼休み
私が教室で一人、本を読んでいると
転校生が話しかけてきた
なんの本を読んでるの? とか
そんな感じだったと思う
この転校生はまだ、私が「大人しい子」だと知らない
だから普通に話すことができた
楽しかったし、嬉しかったけれど
私はこのあとのことを考えていた
みんなの前で「大人しい子」として振る舞う私を見たら
この子はいったいどう思うのだろうと
結局、私とその転校生は
時々話すくらいの仲になった
でも深く仲良くなることもなかった
それから、その子は別の友だちをどんどん作っていった
よくよく考えたら当たり前だ
その子は、私が一人でいたとはいえ
知らない子に話しかけられるような
社交性の持ち主なのだから
私は私で
同じように本が好きな友だちと過ごすことが増えて
その子と関わることがほとんどなくなってしまい
そのまま学校も卒業して会うことすらなくなったけれど
私はやっぱり
その転校生とほんの数分話したことが
今でも忘れられないのだ
【星空】
落ちてくる
私が見ていた光が
空から落ちてくる
星空はいつも優しいものだと
夜空は私たちを見守ってくれると
盲目的に思い込んでいた
けれど彼らは怒っていたのだ
傍若無人な人間たちを
いつか始末しようと思っていたのだ
数時間後には星たちが
この地球を滅ぼすだろう
それまで私は星空を見上げていよう
二度と見ることのないこの景色を目に焼き付けて
地球と共に消えていくのだ
【神様だけが知っている】
何も間違っていないと思っていたんだ
だけどいつも結果は出なかった
俺のせいだけじゃない
絶望的に運がなかったんだ
それでも人間ってやつは
選び続けなきゃいけない
運があろうがなかろうが
いろいろな場面でいろいろなものを選ばされる
朝食に何を食べるかに始まり
どっちの道から学校に行くか
テスト問題の選択肢でどちらにするか
まっすぐ帰るか寄り道するか……
嫌でも選ぶ羽目になる
それらの選択が正解かどうかは
今の俺には分からない
ずっと先の未来は
こういう選択が積み重なって
作られていくものらしい
だから俺の選択が正しいかどうかは
今のところ
神様だけが知っている