【やりたいこと】
何も思いつかない
何もしたくない
何もせずただ朽ちていきたい
やりたいことなんてもうない
やり尽くしたのだ
自分が興味のあるものには片っ端から手を出し
そして興味を失っていったのだ
まずはやってみればいいなどとよく聞くが
さまざまなものに触れていれば
次第に向き不向きは分かってくるし
好き嫌いもはっきりしてくる
だからもう私にはやりたいことがないのだ
やりたいことはやったし
極めるものは極めて
やりたくないものはやらないことにした
明らかに苦手なものからは目を背けた
この世に私がやりたいことなどない
あるとすれば
何もせず朽ちることだけだ
【朝日の温もり】
騒がしい夜を越え
静けさに包まれた朝がやって来た
朝日の温もりは冷え切った心を温め
私に今日を生きる元気をくれる
【岐路】
あの時、道を間違えたのだ
もう一つの選択をしていれば
今ごろはきっと……
なんて思うこともあるけれど
もう一つの選択をしていたら
さらに酷い状況に陥っていたかも知れない
岐路に立つたび
その先のことを考える
この道の先にあるのは
幸か不幸か
どれだけ目を凝らしても見えないが
どんな結果になっても
後悔しないような選択を
自分の意思でしたいのだ
【世界の終わりに君と】
星を掴んで金平糖みたいに食べたい
雲を掴んで綿飴みたいに頬張りたい
月を掴んで煎餅みたいに齧り付きたい
君はそう言って弱々しく笑った
絵本に影響された子どもが言うようなことを
虚ろな目で言うんだ
僕たちはもう
半年くらい二人きりで過ごしていて
君が好きなお菓子なんてどこにもないし
満足に食事もできていない
君が絶望するのも仕方ない
僕だって同じなのだから
僕はズボンのポケットから
小さなクッキーを取り出した
とっておいた最後の一枚だ
僕はそれを半分にして
もう半分を君に渡す
世界の終わりに君と
クッキーを口に放り込んだら
大袈裟なほどに甘くて
まるでおかしな毒でも回っているかのように感じた
もう他に食べるものなんて無い
もしあるとすれば、それは……
二人でゆっくりと静かに咀嚼しながら
近いうちに本当の終わりが来ることを
僕は予感していた
君の目が鋭く光ったのも
僕は見逃さなかった
でも、僕はそれでいい
これからも君が生きていけるなら
きっとそれでいいと思うんだ
【最悪】
私にとって最悪なことは
この世界に生まれたことだ