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【世界の終わりに君と】

星を掴んで金平糖みたいに食べたい
雲を掴んで綿飴みたいに頬張りたい
月を掴んで煎餅みたいに齧り付きたい
君はそう言って弱々しく笑った
絵本に影響された子どもが言うようなことを
虚ろな目で言うんだ

僕たちはもう
半年くらい二人きりで過ごしていて
君が好きなお菓子なんてどこにもないし
満足に食事もできていない
君が絶望するのも仕方ない
僕だって同じなのだから

僕はズボンのポケットから
小さなクッキーを取り出した
とっておいた最後の一枚だ
僕はそれを半分にして
もう半分を君に渡す

世界の終わりに君と
クッキーを口に放り込んだら
大袈裟なほどに甘くて
まるでおかしな毒でも回っているかのように感じた
もう他に食べるものなんて無い
もしあるとすれば、それは……
二人でゆっくりと静かに咀嚼しながら
近いうちに本当の終わりが来ることを
僕は予感していた
君の目が鋭く光ったのも
僕は見逃さなかった
でも、僕はそれでいい
これからも君が生きていけるなら
きっとそれでいいと思うんだ

6/7/2024, 10:31:28 AM