Open App
3/10/2024, 10:07:42 AM

【愛と平和】

この星が
愛と平和だけで出来ていたらいいのに
憎しみも争いも消えてなくなればいいのに
そんな願いは叶いそうにないけれど
せめて少しでも理想に近付くように
目の前のことから
はじめよう

3/9/2024, 10:26:53 AM

【過ぎ去った日々】

「こんなのダメだよ」
「ははっ、いいから乗れって」

自転車に跨った君が
真面目な私に向かって笑う
きょろきょろと辺りを見回し
誰も見ていないのを確認してから
そっと君の後ろに乗る

気持ちいいくらいの青い空
大きな入道雲
田んぼの横を走る、二人を乗せた自転車
心地良い風は控えめに頬を撫でていく

「気持ちいいだろ」

君が前を向いたまま話しかけてくる

「うん」

君と二人だけの秘密の時間が嬉しくて
はじめに抱いていた罪悪感はいくらか薄れていった
たまにはちょっといけないことをするのもいい
……そう、たまには

「来年もまた、こうやって二人乗りしようぜ」
「何言ってんの。今日だけだよ」
「なんで?」
「誰かに見られたらどうすんの」
「相変わらず真面目だなあ」

私より少し不真面目で
私よりずっと明るくて頼りになる君の背中に
そっと頭を寄せると
陽だまりの匂いがした

あれは今から十年も前の話だ
ふとした瞬間に
君との懐かしく美しい思い出が
ふっと現れて
今の私を時に励まし
時に哀しくさせ
時に笑顔にさせる
とうに過ぎ去ったはずの日々は
いつまでも心の中に残っている

3/8/2024, 7:28:46 PM

【お金より大事なもの】

宝くじを当てたのは一ヶ月前
一億円を手にした俺と妻、五歳の息子は大喜びだった
美味しいものも食べられるし
欲しかった車も買えるだろう
海外旅行にも行きたい
他にもいろいろ……夢は膨らむばかりだ
この世にお金より大事なものなんてない
お金があれば大抵のことはできるのだから

けれどある日
会社で仕事をしていると
知らない番号から電話がかかってきた
「息子を誘拐した。助けたければ一億円用意しろ」
低い男の声でそう告げられ、パニックになる
「すぐに一億円を渡しますから、必ず息子を返してください!」

犯人の指示通りに受け渡し場所に向かい
一億円を渡して息子を解放してもらった

息子が無事なことに安堵して
泣きながら強く抱きしめる
犯人を許すことは出来ないけれど
息子が助かるなら一億円なんて惜しくない
お金より大事なものは確かに存在した
一億円よりずっと大切なものが
この腕の中にある

3/7/2024, 12:55:58 PM

【月夜】

雲が少なく月がよく見える夜
私は元の姿に戻り、仲間に会いに行く
狼に戻れるのはこんな夜だけだ
そして仲間と再会できるのも

森の奥の開けた場所へ行くと
すでに三頭の狼が待っていた
嬉しさに尻尾を振っていると
遅れて一頭がやって来た
月明かりの下
同窓会にも似た久々の集会が始まる
みんなで遠吠えをして再会を喜び
唸りながら人間社会の愚痴をこぼす

そして夜が明ける頃
私たちは人間の姿に戻るのだ
すると毎回、自然と解散することになる
今度は人間の言葉で
また会おう、とか
お互い人間界で上手くやろう、とか
別れの挨拶や励ましの言葉を交わし合い
それぞれの家に帰るのだ

人間の世界は面倒くさくて
理解できないことも多いけれど
みんなを見習ってまた頑張らねば
次の月夜の晩が楽しみだ

3/6/2024, 7:43:43 PM

【絆】

些細なことで大喧嘩して
幼い頃からの友情は壊れた
それでもやっぱりアイツが気になって
けれど連絡する勇気もなかった

ある日僕は街で知らない男たちに絡まれ
金を要求された
断ると男たちは逆上した
喧嘩が弱い僕は一発二発と殴られ
もうダメだ、と思った時
アイツが現れた
男の一人を一発殴り返したあと
僕を連れて走った

落ち着いてから
どうして助けに入ったんだ、と聞くと
当たり前だろ、と答える
街に来たらたまたま
僕のことを見かけただけなんだろうけど
見て見ぬふりだって出来たはずなのに

あの時はごめんと謝ると
俺もごめんと言って笑う
やっぱり僕らは見えない糸で繋がっていて
きっとこれからも一緒に笑ったり
助け合ったりしていけるだろう
これが絆というものなんだ、と気付いて
僕はアイツに微笑みかけた

Next