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2/19/2024, 1:51:21 PM

【枯葉】

若く青々とした葉は
いつからか
乾いた茶色の葉に変わっていた
それは私の伸ばしている枝から
一枚、また一枚と
力なく落ちていった
きっとあなたの死も近いのだと
枯葉たちは教えてくれた

どんなに土に栄養があろうとも
この場に立っていられなくなった時
それが私の命の終わりだ
そして私も
この土の栄養となる
それが定めだ
けれど当たり前のことなのに
恐ろしい
親や仲間たちが通ってきたのと
同じ道だというのに

でも
私が倒れるだろうその地面には
枯葉たちが待っている
何も語らなくなった彼らは
まるで柔らかい布団のように
優しく私を受け止めてくれる気がした

怖さは消えなかったが
それでも
定めを受け入れる準備は
少しずつ出来そうだ

命尽きるその時まで
私は美しい枯葉たちの側に
立ち続ける

2/18/2024, 1:38:43 PM

【今日にさよなら】

また、今日が終わる
仕事で疲れたんだから
さっさと眠ればいいのに
テレビをぼーっと見ながらスマホを見て
だらだらと起きている

そういえば
夜に寝たくないと思うのは
今日という日に満足していないからだと
聞いたことがある
本当かどうかは分からないけど
確かに自分は
今日という日に満足していなかった

同僚が仕事でミスしたのを必死にフォローして
それがようやく片付いたと思ったら
別の同僚に仕事を押し付けられた
くたくたに疲れ果て
仕事帰りに寄ろうと思っていた
新しくできたお店に寄る元気もなかった
帰ってきてからも
作業のように冷凍食品をチンして食べて
風呂に入って歯を磨いてトイレに行って

……こんな一日で
満足なんてするわけがない
こういう、つまらなくて心がすり減るだけの一日を
この先も繰り返していくんだろうな
恋人も友達も居ないし
自分に価値も感じない
ただ心身の疲労と戦うだけの日々だ

無意味で無価値な今日が終わるまで
あと数時間

不意に手の中のスマホがピコン、と鳴った
どうやらメッセージが届いたようだ
仕事でミスをした同僚からだった
「お疲れ様です。今日は大きなミスをしてしまい、すみませんでした――」
「でも、――さんが助けてくださったので――さんは、私のヒーローです」
「本当に、ありがとうございました――」

満足ってほどではないけど
なんだか報われたような気持ちになって
自分にも少しだけ価値があるように思えて
なんだか今日という日に
笑ってさよならできる気がした

2/18/2024, 5:11:39 AM

【お気に入り】

お気に入りのものってある?と
友人に聞かれた僕

お気に入りのスマホアプリ
お気に入りのSNS
お気に入りのウェブサイト
お気に入りのショッピングアプリ
お気に入りのYouTubeチャンネル
お気に入りのニュースアプリ

などを答えてみたら

スマホばっかりいじってんなよ、と言われ
はっとした
僕のお気に入りは
いつからスマホの中のものだけになったんだろう

子供の頃は
お気に入りのヒーローがいて
お気に入りのおもちゃがあって
お気に入りの公園に
お気に入りの遊具があって
お気に入りの遊びを
お気に入りの友達として
お気に入りのおやつを
お気に入りのベンチで一緒に食べたのにな
帰ったら
母さんが作った
お気に入りのハンバーグを
お気に入りのフォークで食べて
父さんと風呂に入ったら
お気に入りの匂いがする石鹸で体を洗われて
寝る時間になったら
お気に入りのタオルを持ってベッドに入って
眠るまで家族とくだらない話をして
そんな時間さえもお気に入りで

それなのに
僕はいつから、こんな風になったんだろう

2/13/2024, 3:46:04 PM

【待ってて】

思い出のあの海で待ってて
二人誓い合った想いを胸に
これからの未来を約束するの

2/12/2024, 1:18:23 PM

【伝えたい】

痛いとか悲しいとか
もう嫌だとか
そういう気持ちを押さえ込んで隠して
あなたにたった一言
愛していましたと
伝えたい
もうすぐ居なくなるくせに
あなたの心に残るような言葉を残す
卑怯な私を許してください
だって消えたくないんだよ
この体が無くなるなんて
この意識が無くなるなんて
受け入れられるわけない
だからせめて
あなたの心だけに
私を遺させて

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