桜月

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4/15/2023, 3:29:58 PM


彼はいつも1人だった
友人とつるんでいる所を
見た事がなかったから

他人に関わりたくないのかと
思っていた

だから、初めて彼に話しかけられた時
とても驚いた
私も話してみたいと思っていたから


届かぬ想いだと思っていたけれど
お互いの想いが届き実ったのだ


だが、結婚して しばらくすると
彼は戦争に行き 二度と戻らなかった

無事に帰って欲しいと言う想いは
届かなかった

随分待たせましたね。
おじいさん…そろそろあなたの側に
行けそうです


おばあちゃんの最後の言葉を
忘れないでね と 母は穏やかに微笑みながら 涙をこぼした


「私がいなくなっても悲しまないで
皆んな、笑顔で 幸せに
また いつか …

… やっと…おじいさんに会えるのが
とても、楽しみだわ」


       #届かぬ想い

4/14/2023, 12:30:04 PM



子供の頃 辛い事があると
神様へと手紙を書いた

"お母さんの病気が治ります様に"

"お母さんが、退院して帰ってきます様に"

"お父さんと お母さんと
また3人で遊園地に行きたいです"

何回も何枚も手紙を書いた

ただ、その手紙はどこへ出していいか
わからず 宝箱にしていたお菓子の空き缶へとためていた

もちろん、神様から返事はないし
願いは、叶うものもあれば
叶わないものもあった

お母さんの病気を治してほしいと書いた事は 神様へと伝わらなかったのか
母はかえらぬ人となり

それをきっかけに 私は神様への手紙を書かなくなった…


それから数年が経ち
部屋の片付けをしてた私は
見つけてしまった

宝箱の中の沢山の神様への手紙の中に
一枚だけ、母から私への手紙を

『 みぃちゃんへ

 元気ですか?

この手紙を読む頃 私は 
あなたのそばにいるかしら?

本当はあなたの成長をもっと見守っていたかったけれど…

ずっと 見守っていているからね
心から 愛してる

      お母さんより』

お母さん…

もっと 一緒に居たかった
もっと 一緒に生きたかったよ…

今まで、神様からの返事はなかったけれど 神様は 代わりに母からの手紙を
私にくれた

そして 久しぶりに神様へと手紙を書く

神様
お母さんからの手紙をありがとう
今、幸せです と伝えてください

        #神様へ

4/14/2023, 4:12:51 AM


 
《昨日と打って変わり 本日、東京は快晴となりました

この時期の快晴って 黄砂とか
花粉とか 色々気になりませんか?

花粉症の方、辛い時期ですね》


朝から 軽快な音楽と共に ラジオパーソナリティの声に癒されている
このラジオを聴く様になって
もう2年程経つ

「今日もいい声だね」

僕の声など彼女に届かない事は理解した上で 話しかける

《 ここで おハガキを紹介します
 … ペンネーム 君の声が好き さんから頂きました…》

あぁ、僕だ!
僕の出したハガキが採用されたんだ
嬉しい 朝から 幸せな気分に包まれる
空は快晴 彼女はいい声
明日もこんな一日を過ごしたい



朝、目が覚めてカーテンを開けると 外は雨が降っている…


《昨日と打って変わり 本日、東京は快晴となりました

この時期の快晴って 黄砂とか
花粉とか 色々気になりませんか?

花粉症の方、辛い時期ですね》



朝から 軽快な音楽と共に ラジオパーソナリティの声に癒されている
このラジオを聴く様になって
もう2年程経つ…

いや、5年かな…

「毎朝、聞いているけれど
やっぱり 今日もいい声だ」



明日も 君はいい声だろうか?



 #快晴



4/12/2023, 2:38:37 PM


あの時の記憶は薄らとしかないが
母が、鼻声だった事は覚えている

幼すぎた私は 母の手を握り
いつまでも空を見上げる母親に
退屈さと 肌寒さで 幾度となく
話しかけた。

あの時 母がどんな思いで
そうしているのかなど 考えにも及ばず   

『お母さん、何を見てるの?』

『お腹減った』

『お母さん?』

母親は返事をする事なく
ただ空を見上げている

『お母さん…お父さんは?』

そう聞いた時 
私の手を握る手に 力が入るのが 
わかった

「…お父さんは
遠くの空へ行ったのよ」

『遠く? 
あのアヒルさんみたいな雲くらい??』

「もっと、もっと ずーっと遠く…」



 喪主様 お時間です

係の人が話しかけるまで 
私はただ、空を見上げていた
 
あの時の母と同じ様に…

お母さん、お父さんには会えたかな?


 #遠くの空へ

4/11/2023, 2:49:38 PM


 『はい』

 それ以上の言葉が、色んな感情が、
胸に詰まって 言葉にできない

溢れ出す涙が頬を伝う…

彼が私に優しくキスをした

『で、結局さ あの時は
「誓います」って言えてないの!
「はい」しか言ってない
だから、誓ってないの!』

「ちょっとあんたこれ、何杯目?」

空き瓶を並べてクダを巻く
私の電話を受けて 居酒屋に駆けつけた
友人の言葉だ

「ねぇ、
あんた いい加減にしなさいよ?」

『なによ… だってさ、
まだ、結婚して1年も経ってないのに
もう、浮気してさ!』


この友人は私をよく知っている
小学校からの深い付き合いだ

性格、好きな食べ物 
洋服の好み 過去の男関係…
なんでも お見通しなのだ

「あんた 疑い深いしさ
 思い込み激しいし…
今までだって 浮気だ!とか大騒ぎして。
違いました〜って 事 あったよね?」


『あった。
 あったよ… そう あん時は違った
なんか 様子がおかしかったから
浮気かなって…
まさか、プロポーズしたくて
ソワソワしてました
なんてさ…そんな事が あった。

けど、今回は 本当に疑わしいの!』

はいはい…
あの〜すいません、ここ
お勘定いくらですか?

友人は私の言葉など 聞かず
勘定を済ませ どこかへ電話をしている

しばらくすると その疑惑の夫が
迎えにきた

すみません…と何度も頭を下げ
私を車に押し込んでその場を後にした

「また、明日電話するからね」

… 本当 あの子の酒癖の悪さは
呆れて 言葉にできないわ…


  #言葉にできない

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