手のかかる年老いた者は
死にたいと言いながら
生かされるしかないのでしょうか
どうしてだろう
ショートステイから
帰ると母は機嫌が良い。
家に帰れたからもあるだろう。
でもきっと、施設で優しくされるから。
3日ほど私と2人で過ごすうちに、
その優しさを忘れて、
不安や怒りがおおってしまう。
やさしくできたら良いのだけど、
わたしもそんな人間できちゃいない。
淡々とふつうに家事をして、
同じ質問に答える。
どうすれば良い?
ほめちぎる?
わたし演技とか無理なんだけどな
演技でも良いから、
優しくなりたい。
なんせあと20年は生きるらしいから
鋭い目で睨みつける
ノートの位置をうごかすな
(私の連絡ノートです)
人ん家のものを漁るな
(明日のショートステイの準備)
歯を磨きながら答えるな
(歯を磨いてるときに質問するな)
ショートステイなんで行かなあかんの、
あんた、わたしの面倒みんの
嫌なんやろ
もう出て行って
母から向けられる、剥き出しの憎悪
病気とわかってても
まともに受けたらだめだとわかってても
堪えます
出ていくわと言ったら、
出ていくなとつかみかかる
ゆっくり力をこめてふりほどく
自転車で駅まで
ドラッグストア、スーパー、コンビニ
わたしの1番好きなお菓子を買って
実家へ戻る
鍵をあけておかえりって
ただいまって
何もなかったように。
鍵がない、
通帳が無い、
カードが無い、
泥棒が入った、
お金がない、
あるよ、大丈夫。
通帳を見せて納得して、
半日、翌日また繰り返す。
ご飯用意して5時間程出て帰ると
銀行に電話して喪失届け。
警察にも電話するところやった。
何にも言わんと持っている
あんたが悪い。
なんでもすぐに無くすから
大事なものはあずかってる
そんなんわたし生きて
いかれへんやんと母
左の口角を上げて、
上唇を舐めてから噛み
睨みつける表情
子供のころ、
学校に行きたく無いと言った朝、
ほほをひっぱたかれた時に
見た顔と同じ。
嫌なことばかりおもいだす。
好きだった母。
いつのまにか嫌いになって、
それでも好きなところは残ってるはず。
今はあの睨み顔しか
思いうかばない。
夜明けはくる?
父親の愚痴を母に言うと、
母は、私を質問攻めにして
粗探しをし遠回しに責めてくる。
子供の頃、父親の暴力こそなかったが
暴言の数々、母は泣きながら家を飛び出して、私は後を追う。
子供ながらになぜ別れないのか
別れたら良いのにと、
思って母にもそう言っていた。
あれから40年近く経ち、
父親は入院、私が実家に泊まり込み
認知症の母と暮らす。
認知症の症状がひどい時には
娘の私がわからなくなり、
父の事を、うちの旦那と呼ぶ。
私が他人の立ち位置。
別に良いが、
娘よりも旦那が好きだとはっきり言う。
思い当たる節は数々...
他人からみたら理想の夫婦
なのかもしれない。
なんだろう、この気持ち悪さ。
両親を尊敬できない自分への腹立たしさ。
見ないようにしてきた、
気づかない様にしてきた事が
あからさまになっていく。
これからまだまだ長く続きそうな介護。
どうしよう
すでに心の灯火は消えそう。