「信号」


「私達だけの信号ね！」
私は友達と秘密の信号を作った

不思議なことにこの信号は
私達の感情によって
自動的にライトが光るらしい

赤　黄　緑　青　紫　そして黒
それぞれの色ごとに意味をつけた

赤は苛立っている
黄は普通
緑は嬉しい
青は悲しい
紫は苦しい

意外と使えるしすごいと思っていた
あの日のことが起きるまでは


私は友達と学校から帰っていた

「学校疲れた

「それなぁ

「てかこのライトめっちゃいい！

「結構使えるのいいよね！

「だよね...あれ車が...

「...危ない！

「え...？


ﾊﾞﾝ


鈍い音がした
私の友達は5mほど飛ばされた
幸い車に引きずられることは無かった

「なんで...


「誰か救急車を呼べ！

「一応警察も呼んでおきます

「お嬢さん大丈夫？


見知らぬ人が慰めてくれていた
でもそれより気になるのが
ライトの色だ

全ての色が点滅している
点滅は聞いたことがない

点滅していくたび
黒い部分が増えている


...ライトの色は黒く染まってしまった
この信号は感情がわかる
でも黒だけ違ったみたい




黒は人が死ぬときの信号だった

「夏の忘れ物を探しに」


私は忘れ物が多かった

「あー...また忘れ物...

私は忘れ物が多かった

「あれ...ない...

私は忘れ物が

「家かな...

多かった

「帰ろ...

学校のチャイムが鳴り響く
校舎には一人
いつも最後まで残っている
忘れ物を探すために

「みんなおはよー

...

「おはよ...

聞こえていないのか
無視しているのかわからなかった

私が忘れ物多いから関わりたくないのかなぁ...
そう思うようにしていた

「ねぇ...去年の夏にあった事件知ってる？

「知ってる...結構やばいやつだよねー...


「何の話してるの

私が聞いても無視する
なんで

「無差別殺人事件...ここの生徒も死んじゃったんだよね

「そうそう...しかも　死んじゃった生徒は夏になると
　彼岸から此岸に来るらしいよ

「えーなにそれ怖いんだけどー

「自分の体を探しに此岸に来るって噂なんだよね


「なにそれ　私も聞きたい

...

あれ　私なにしてるんだろ
やるべきことは他にあるのに
そうだ思い出した

私のやるべきこと
やらなきゃいけないこと

それは


私の
忘れ物を探しに...





行かないと

「8月31日、午後5時」

8月31日の午後5時
私は死んだ

いつも通りの天気
いつも通りの時間
いつも通りの学校
そして
いつも通りの

いや　違う

いつもと違う世界


今日は8月31日
私の誕生日
それと
私の命日

私の思い出はない
覚えているのは友達が死んだこと

友達は世界に殺された
変わってしまった世界に
そして私も死んだ

全部無くなった
記憶も
感情も
友達も
世界も

私も

8月31日
事故だった
私は人間じゃ無くなってしまうのが怖かった

みんないなくなった
私は取り残された
横断歩道の真ん中
車はこちらに走ってきていた
運転してるのは
人間じゃない何かだった

午後5時
私は考えることをやめた

死んだらみんなの所に行けると思った
私はわざと車に轢かれた
車は止まりもせず
そのまま私を引きずった

私は死ぬことができた
でも
みんなはいなかった
暗いところで一人
怖いとは思わなかった
考えることをやめたから

人間じゃ無くなってしまったから


8月31日　午後4時
私は死んだ

夢だった
朝起きた
ご飯を食べた
学校に行った

家に帰ってきた
誰もいない
当たり前

私の家族は死んだ
世界に殺された

違う
世界は
私が殺した
私がみんなを殺した

私は人間じゃなかった
だから

私は自分を殺した

8月31日　午後5時
私は死んだ

「記憶の地図」


記憶の地図を辿っていくと　いつかは辿り着く
面白い冒険だったり　絶望的な物語だったり...
空想を切り開いていくこともできる...　　私は
のんびり仲間と過ごすのが好きだ
なんでもできるこの世界では　もはや人は居ない
いつも通りは既にない...

僕はずっと同じ景色を見ている
宇宙のように見えるものは宇宙ではない
景色は本物ではない　この世界は全てが偽物

ん？これは...


「本物だったらよかったのに」

「Sunrise」


ｴｲｺﾞﾖﾒﾅｲ