春爛漫の季節を迎えた今日この頃、先生はいかがお過ごしですか。俺は手紙を書くとか初めてでビビっています。学校は無事進級しました。この春から、受験生です。
先生は覚えていますか。昼休み、教室で寝ている俺を起こして問題を出してきましたよね。
『春を説明しろ』
正直、体育教師の分際で俺の苦手な現代文みたいな問題を出すあたり性格が悪いなと思いました。暫く考えた後に、四季の一つ、と薄い回答をしました。
「教えてやろうか」
そう笑う先生の行く先へ着いて行きました。着いたのは校内にある桜の広場で、先生は地面に落ちている桜の花弁を拾い集めた。
「花が咲き乱れて、光に満ちたこの景色が春。いくぞ?」
先生は集めた花弁を俺らの上に向かって投げました。花弁が空で綺麗に舞って、何枚かは先生の髪に乗っていきました。風に吹かれながら笑う先生は、夢かと疑うほどきらきらしていました。
俺は季節が移り変わることになんの興味もなくて、花も生き物もどうでもよかったんです。なのにそのきらきらに胸を打たれました。もう葉桜だし、天気も曇ってたのに。
あのきらきらが俺の頭に焼き付いてるんです。
今年も同じ広場に来ました。天気は気持ちいい程の快晴で、桜もまだ散る前。俺は賢いから去年よりも良い日に来ました。
でも、きらきらはしていませんでした。
先生のきらきらが強すぎて、もう俺は春を見つけられません。
間違いを教えないでよ先生。俺に正しい春を教えに、俺のいる学校まで戻ってきてくれませんか。
#春爛漫
一目見た瞬間からこいつに心を奪われていた。
端正な顔立ちでムードメーカー。決めた人には尽くすタイプで、先輩には礼儀正しく振る舞い後輩には優しく。こいつのどこを切り取っても嫌悪を抱く者など居ない。俺が探し求めていたのはこいつだと、確信していた。
だってこいつは誰よりも、ずっと気が狂っているから。
やれ、って言われればどんなに面白くなくてもやってくれるなんて、こんなに最高なパフォーマーは近くでは見たことがない。今こんなに面白みの欠片もない奴と組まされているのが勿体ない程だ。こいつの相棒に相応しいのは俺だ。
俺ならこいつを誰よりも、ずっと輝く一番星にしてやれる。
俺は関わる皆から嫌悪を向けられる。
『自己中心的』『天才の考える事は分からない』
口に出されなくともそんなオーラを感じとっていた。お前だってそんなのは何年も前に分かった癖に、俺を信じてこの手を離さないでいてくれた。
誰よりもずっと馬鹿で、
誰よりも、ずっと、ずっと、おかしいよ。
ありがとう。
この世でただ一人、お前にだけ感謝を伝えたい。
#誰よりも、ずっと
お前の嫌いなところがいくつもあった。
直す気のない癖も、頑固なところも、事前に相談しないで進めるところも、昔あった出来事をいつまでも根に持ってるところも、文句ばかり付けてくるところも、全部許せなかった。こんなに人を嫌いになったのはお前が初めてだった。
それでも隣に居たかった。俺はお前に大きな信頼を寄せていた。
お前が手を引っ張るから、俺は思いもしなかった景色が見れる。『有り得ない!』と言いたくなるような行動でも、お前はそれを面白みのない結果にしたことなんてなかった。
これからも、ずっとお前を好きになることはない。
でもこれからも、ずっとお前を信じてる。
これからも、ずっとお前の隣で。
#これからも、ずっと