『フラワー』
私を花に喩えるならば
か弱げに咲く、紫のコスモス
弱そうに見えて、実は強い茎に支えられ
時には図々しく伸びていく
内に壮大な宇宙を秘めた、ミステリアスな花
私を花に喩えるならば
夏の庭に咲く、青い露草
踏みつけられて、ひしゃげた時も
黙って消えはしない
深い青の色を、誰かの心に強く刻む
人は、心の中にいくつもの花を持つ
そして、どれか一つには決められないまま
割り切れない世界で
割り切れない自分を生きる
誰にも決めつけられない、ひとつを持って
私を花に喩えるならば
どこにも存在しない、空想上の白い花
何色に染められても
必ず白に戻る、不思議な花
そしていつかは、誰かの余白を
その白で埋め尽くす
『新しい地図』
新しい地図を買った
真新しい紙の匂いに
少しだけ、心が浮かれる
新しい地図を片手に
今度はどこへ行こうか
桜の巨木がある場所
それとも、久々に海もいいかな
紅葉の綺麗な公園とか
白銀に染まった草原も素敵だね
そこで新しい誰かに出会って
楽しい話を聞きたい
私も、たくさん話すから
笑顔で聞いてほしいな
新しい地図の向こうに
いくつもの景色や人が見えてくる
人は空想することができる生き物
その分、傷つくことも増えるけど
傷ついた分、パレットの色は増える
新しい地図を広げて
新しく広がる風景を想像しながら
さあ、今度はどこへ行こうか
『好きだよ』
本当は、手を繋ぎたい
思いっきり抱き締めてあげたい
でも今は、近くにいて見守っている
むやみに触れたりしたら
きっと、あなたは傷ついてしまうから
いつだったか、あなたが家族から
強い口調で何かを言われてるのを見たよ
それでもあなたは、走り去る車に向かって
力なく微笑みながら手を振っていたよね
どんなきつい言葉をぶつけられても
あなたにとっては大切な家族なんだ
あなたは無口で繊細で優しい人
だけど、とっても芯の強い人なんだってことを
私は知ってる
ほどけかけた心が
また閉ざされてしまわないように
今日も私はあなたと目を合わせて
黙って微笑み合う
少しずつ、少しずつ
時間はかかっても
この距離が縮まりますように
あなたのことが好きだよ
ずっと味方だよ
『君と』
君と私はよく似ている
あまり人と話さない所も、猫背な後ろ姿も
自信なさげに喋る優しい声も
集中したら時間を忘れる所も
驚くほどよく似ている
きっと私たちは、今までの人生で
似たような痛みを受けてきたのだろう
痛みは人を変容させてしまうものだから
たとえ、年齢や性別や住む所が違っても
同じように傷ついたら
同じような人間になる
君と同じ空間で、時を過ごしながら
でも私は弱いから何も話せない
自分の殻を破れない
曖昧な距離感を保ったまま
今日も時間が流れていく
明日も、君は来るんだろうか
挨拶だけでもできたらいいな
『はじめまして』
いい歳をした四月生まれの女で
血液型はA型、真面目な性格
趣味は読書と音楽鑑賞と、小説執筆
だけど忙しくて、小説は最近書けていない
はじめまして
これが私です
学校はあまり好きじゃなかった
そのくせ勉強は大好きな変人
文字や数字に色が見える共感覚者
時々、音楽鑑賞中にも色のイメージが浮かぶ
はじめまして
これも私です
他人が嗤うと、自分が嗤われたと思い込み
その直後に自己嫌悪に陥る
抑うつ傾向が昔からあった
恐怖を伴うこと、特に体育が苦手
はじめまして
これも私です
一人でいたいけれど、人とも関わりたい
静かなのが好きで、目立つのも好き
矛盾しているくせに
理屈の通らないことは嫌い
はじめまして
これも多分、私です