厳しい冬の寒さに耐えた、小さく力強い命の芽吹き。
その生命の放つ柔らかい匂いが、
風に乗って僕らのもとにやってきた。
その言葉を言い終えた刹那、
軽快な破裂音とともに左頬に鮮烈な痛みが走り、
今ほどまで目の前にいたはずの女が僕の視界から消えた。
生きる意味が知りたい。
そう思い立った私は、旅に出た。
色々な世界を見て回った。
広々とした空に、海に、大地に、魂が打ち震えた。
出逢う人々に、人間も捨てたもんじゃないって思えた。
けれど、そこに生きる意味は見つからなかった。
私は仕方なく、諦めて帰ることにした。
私の故郷は、きっと世界に取り残されている。
空港から、バスを乗り継ぎ電車を乗り継ぎ、帰ってきた。
家に着くまで、人に甘えず自力で帰る。
これは当初から決めていたことだった。
「おぉ、帰ったか。おかえり。」
いつものんびりとしている父が
機敏な動きで玄関にやって来たのが
少しおかしくて、笑ってしまった。
妹がドタドタと階段から駆け下りてくる。
「お姉ちゃん、お土産ちょーだい!」
すごい勢いで抱きつかれて、私は少しよろける。
言葉と行動が、めちゃくちゃな子だ。
妹の頭を撫でながら前を見ると
サスケが父の後ろから現れ、もげるのではないかという
勢いで尻尾を左右にブンブン振っている。
あれ、私の家族ってこんなに愉快だっただろうか。
皆、私があちこち旅をしている間に
変わってしまったのだろうか。
わからないけれど
大切な人たちがこうやって
愉快に笑っていられる世界なら
もう少し生きてみてもいいかもしれない。
そう思った。
けん。
そっちはどうだい。
寂しくしてないかい。
そっちでは体はよく動くかい。
いっぱい美味しい物食べれてるかい。
じいちゃんには、会えたかい。
おれ、何十年かしないと
そっち行くつもりないけど、
それまでじいちゃんと仲良くね。
ほんじゃ、またね。
ゆらゆらと頼りなくて、心許なくて
気が付いたら、消えてしまいそうで。
大丈夫かなって近づいてみたら
意外と芯が温かくて。
全然心配する必要なんかなくって。
周りがキラキラしすぎてるから
君はいつも目立たなくて。
でもそれでいい。
私だけは知ってる。
心に凍えるような夜が訪れた時
君の優しい灯りが
何より勇気をくれること。