天坂えみる

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11/14/2023, 3:16:53 PM

       『晩秋に憂う』
冷たくなった秋風は缶コーヒーに甘さを求める切なさだ 信号待ちで吐く息は日に日に白くなっていく 
心の靄は濃淡か 飾られることのない油絵か 枯葉を踏んで歩いていると 日常が古着になっていく 予備のボタンよ目を覚ませ 朝と夜が歪み合うその前に

11/13/2023, 2:11:09 PM

    『また会いましょうお嬢さん』
かもめが空に円を描く 水平線に溶け込んで まるで
クレーの絵画みたい 私は私で流木で夏を描いたよ
もう遠くへ行ってしまったね おーいと呼んでも届かないかな 滅多にやってこない列車が枕木を揺らしてる そうだねいつか また会いましょうお嬢さん

11/12/2023, 1:23:08 PM

      『ブラックペッパー』
転がる石を気取っても 所詮テーブルの上から出られない 胡椒ひと振りのスリルを片手に 知らない世界を想像で埋めている 夢想家と呼ばれて 宙に浮く
ビールのお供に肉を焼く テーブルの端っこで私は自由だと日々息まく

11/11/2023, 1:37:35 PM

       『キウイフルーツ』
キウイフルーツは翼を持たない 銀のスプーンの後味が嫌いでため息をついている 祝祭と人は言う しかしそこには何もなかった 翼があるのに飛ばない鳥の
群れだけが 姦しく鳴いていた

11/11/2023, 6:28:45 AM

         『隠退』
冷たい風で目が冴える 川岸で隠れんぼ 見つけられないまま凍える夕べ 夜の暗さでまた目が冴える
役目を終えた人々の溜まり場だ 片道切符を握りしめ
星屑になってしまう 望遠鏡でも見つけられない星屑になってしまう

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