『オワコン』
1日は案外長いのに 夕暮れ時にフォーカスしてる
靴擦れを気にして歩く 吊り看板が揺れている
次のトレンドの闇市が始まる 自分らしさが投げ売りされている 個性はもはやアプリケーションの中にある 私の中古のiPadは巷ではオワコンと言われている
愛着があるので さして気にならない 剥がれかけたムーミンのステッカー 薬指で撫でつける
『セプテンバー』
カーテンカーテン ひらひら動く 私はハンケチ被って寝てた 朝陽も夕陽も巻き込んで この部屋は浮き上がる 秋風の車輪 ベッドは乗り物になる さよなら9月にお別れを 季節を越えた巻き髪で 長袖シャツに軽く挨拶
『アンダルシアの月』
静かだ 誰もいないので 当然だけど静かだ 白い部屋パルプフィクションのポスターが貼ってある 私のせめてもの主張 何か派手なことがしたい 四角い窓にまあるい月がぼんやりと 剃刀で切り裂いてやろうか 月の中身がみたくはないか 玉子の黄身が出てくるか はたまた人々の憎悪の塊か 想像は月を一周して 私の静かなアクションは一先ず終わりを告げられた
『グッドバイ』
交差点 雑踏 それぞれの物語が交わることは奇跡に等しい そんな奇跡を越えた二人にも別れはやってくるんだね さよならと手を振って 夜な夜な数式を解いている 理路整然とすることで心の穴を埋めている
あれだけ愛した散文詩 最初の一行も思い出せない
響いているのは グッドバイのリフレイン いつか必ず忘れるだろう 私はそういう生き物だから
『冠水間近』
私の涙腺 冠水間近 涙溢れる 雨の午後 通り雨で
済めばどんなにいいか 雨は降る 降り続ける
哀しみってなんだろう 感情線は廻り廻るサーキット
さようなら その一言がはじまりだった