『徐行運転』
徐行運転はノスタルジーだ ぼやけた頭 少しの眩暈
僕は今泣いてるんだろうか 上水路にあの日の友達
影になった思い出はなんだかはしゃいでいるようだ
ありったけのコインは偽物だけど たった1枚の百円玉は本物だ ペットボトル 炭酸飲料を分けあって 冒険に出かけたんだな 見通しの悪い交差点 青信号が僕を囃し立てている
『夕星』
優しさにかまけて だいぶ眠ってしまったらしい
暫く気持ちが行方不明なので 牛乳を飲むことにする
うっすら光る夕星だ 密やかに夜が始まるんだ 多分眠れないから 君の手を握っていよう 貨物列車が余分な荷物を捨て去って走る やはり大切なものだけ残っている 言葉にしなくても残っている
『通学路』
通学路をゆく 太陽が自慢げにコンクリートを照らしてる 道端で出会うゴキブリは奇妙さの欠片もなく
私とあまり変わらない気がした 友達が歩いてる プールバッグが新しくなってる 友達のことは好きだけど 根も葉もないウワサ話しは聞き流すことにしてる
空を見上げて 昨日夢に出てきた神様のことをふと思う 神様だけが知ってることがあるらしい それはそれでなんだかずるいな
『鉄橋』
途中下車 プラムを齧り 道を行く オロナミンCの看板ひしゃげる トタン屋根にはお決まりの猫の昼寝
土手まで歩く一人きり 鉄橋を列車がいくよ 『おーい』と手を振り 落としたプラム すかさず鳶が盗ってった 葦が揺れる 風に揺れる 橋の下 また一人 時計を持たぬ旅人が少憩している
『歩いて5分』
無条件に汗を呼ぶ まだ家から歩いて5分 煮える身体にそよ風吹くと 夏の匂いに痺れてしまう 幾多の思い出も連れ立ってやってくる にくい風だ 自転車 花火 大混雑 海に飛び込み もう一度 自転車。。
目的を一瞬忘れる 夏の匂いの不思議な力