『明日』
明日世界が終わるというのに 沸騰するやかんにあたふたしている ちょっぴりひしゃげたチリトリも買い替えるかどうか迷っている さほど面識のない近所の人に『また明日』と声をかけている 少し余ったカレールー、カレードリアにアレンジしようと思いつく
このエプロン、洗おうかと思い、洗濯カゴの前で思い留まる そうだね、明日世界が終わるというのに
『恋愛前夜』
心臓に雷鳴 私はきっと恋をした ちょっときつい階段を上るみたいに段々とそれに気づいたようだ 今夜はちょっと心の支度が必要で『恋愛前夜』ということにする 胸がきゅっと締めつけられるので 心臓を暫時手放したい 頭はあなたの顔でいっぱいなので、バックアップを取らせて下さい。 こんな夜はどうしよう? こんな夜はもうどうしようもないとあきらめよう
『空に綿雲』
雲が綿飴みたいだな 私はあれを独り占めする 屋台でみたドラえもんの綿飴何個分だろう? 何回お祭りできるだろう? 虫歯菌が私の奥歯に旗を立てるだろうな 作業開始の合図はなんだろう? いきなり激痛はごめんだな 独占は、、独り占めはよくないな 私がどくせん止めたら 独裁者もどくさい止めるかな?
止めてほしいな ぜひとも止めていただきたいな
雲を見て怯える世界なんてほんとにほんとにごめんだな
『夜の動物園』
夜の動物園は盛況だ ごった返すというやつだ あなたの部屋の本棚もそうだった もっというと洗濯カゴもそうだった あなたがいないと知った時、星の位置が少し変わって 泪の星座ができました じっとしているハシビロコウも同じ夜空を見ている気がして余計に淋しくなりました 淋しさだけじゃなんだからありがとうを足してみる この星で出会えた喜びでもひとつ星座ができました
『時にそれはナイフだ』
ほんのちょっと哀しくて 水に溶かしたカルピス
改札口で戸惑って 蜘蛛の巣散らして歩く足
部屋で寝転がるあなた 私のコップを洗うあなた いつしか不用意な優しさの奥にちらつくナイフが見えた気がした 温かいはずなのに冷たい 冷たさの中に不自然な温もり 私はそう遠くない日にあなたに切り裂かれる