『女の子のマーチ』
毛虫のダンスを横目に 女の子は歩き出す
その一歩は鈴なりの果実のように 瑞々しくて愛おしい 頬のにきびに触れながら ぼんやりと考える
このドキドキの所在のことや 朝の訪れがせっかちなこと ジャンクフードが食べたくて 自転車をこぎつづけた わりと最近のお話も 全部女の子の成分なんだ お気に入りワンピース 風に吹かれて ふわりと
揺れた
『ひとつだけ』
地球が生まれるような 奇跡の瞬間を指でなぞって
少しひしゃげたハートのマーク 宙に浮かんですぐ
消えた 岩魚の呼吸のあぶくだろうか? はたまた漫画の心象風景 まだ見ぬ世界がよくなるように たったひとつだけの希望を託す
『春眠と欲望』
春の朝、未だ起きれず 海老の姿勢で眠っている
海の底にいるようだ 海面を見上げて呟くは
人の欲望は無窮である 守るための暴力や平和であることの圧力にひたすら背を向ける 正しさはいつでも反応の無いリトマス試験紙だ 海老は眠る 昼をゆうに超えて 夕暮れはもう近い
『遠い街』
遠い街へ行く その街でこれから暮らす 僕の背丈では世界はまだまだ見えにくい 未来って言葉がずるいって思う あのこはここで暮らすのに 僕はここで暮らせない 巣立ちはとても残酷だ 翼なんかなくても
いいって思う 春は何かと鼻をくすぐる その日が来たら僕は号泣の嵐 天気予報はまんまとはずれた
『永遠の非常口』
ゲンコツ山から逃げたくて 針千本も飲みたくない
四方八方固められ 作り笑顔でごまをする
どこにいった?素敵な私 どこにいった?シンクのたわし 頭を散らかし バイトでやらかし 罰ゲームで練り辛子 走らなきゃ 走らなきゃ 決して長くない足で 陸上選手にほど遠い だけども愛しいその足で
目指すは永遠の非常口 あたま空っぽのユートピア