『大空』
トンネルくぐれば空が大きい 空は大きいって知ってたけれど目で見て感じるのはこれが初めて 小さな頃から見てきたのにな 毎日毎日見上げてきたのにな
あまりに身近すぎたかな 本当は何も知らなかったのかな 今朝見た大空 気づきがこんなにいっぱいだ
『ベルが鳴る』
大人たちの談笑の隙間を縫って 煮込んだシチューのご機嫌いかが? 今君に聴こえるように ささやかなベルが鳴る 合図を聴いたら出ておいで 君にだけに溢れるメルヘンをあげるから
『寂しい坂にて』
寂しさと淋しさのあいだに真綿を詰めてもの寂しい羊ができました。羊の足ではメリー•ルゥの丘まで48時間はかかります。そのあいだに僕らはことばを失い、文字は消え、笑ったり泣いたりすることもままならなくなりました。寂しい坂では電話が鳴くよ 木箱が軋んで村ができるよ ポルカを踊りくるくるいくよ 僕らの真新しい表現はメリー•ルゥまで響いてく。
『商店街』
おろしたてのコートはモスグリーン 悴む指先に季節を憶える 商店街のカフェに寄り、エチオピアのコーヒーでソニークラークを聴いていたい だけども、今夜は鍋なのだ。葱と春菊それから豆腐、買い物かごはふくやかだ。商店街を通り過ぎ、家に帰ろう 冬は一緒に帰路に着き、鍋の味見をせがむんだ。
『お喋りな日々』
他人とのお喋りは避けたい できるだけそうしたいのだ 仕方無しに関わるとしても天気の話だけで済ませたい そんな私はお喋りが厭なのか? そんなことはまったくなくて ヒヨコのようにぴよぴよとお話してみたい 誰にたいしてもそうでありたい ぴよぴよ
ぴよぴよとしたいのだ 私がぴよっと言って あなたもぴよっと言う 頬を赤らめ笑い合う そんなお喋りならしてもいいなと思うのだ。