ペンを机に置いて、窓から外を見る。テスト前日なのに、全然集中できない。嫌になる。晴天の空は、わたしに雨を降らした。
あと百ページはしないと、夜ご飯食べられないのに。
#窓から見える景色
樹海。自殺の名所として知られるこの場所に行くと、至る所から声が聞こえた。成仏できていない人の声は、どこか悲痛なものであった。
やはり仲間を呼ぼうと死にたくなるようにさせるのか、この場所に来ると気分が沈む。こうしてつい死んでしまって、成仏できずに仲間を呼ぶという 循環に陥ってしまうのだろうな、とぼんやりと思った。悪いこととも良いこととも思えないけれど、わたしが感じたのは恐怖であった。
「はしゃぎすぎるな」。わたしの人生のモットーだ。楽しむのも悲しむのもいいけれど、楽しみすぎて周りを見えなくするなというだけの、しょうもないモットー。
はしゃいでしまいそうな気持ちを抑えるために、樹海に来る。そうして、気分を落としてから生活に戻る。何度繰り返しただろう。いつのまにか、声は聞こえなくなっていた。
と、一言だけ声がした。
「おまぇ、全然死んでくれへんやないけ」
なるほどな、とわたしは思った。
#声が聞こえる
「あーあ、もう秋か」
わたしはひとりの教室でため息をついた。早くに来て誰もいない教室では、すごく独り言が捗る。
高橋律樹。わたしの好きな人だ。丁度2年前から、彼を好きでいる。わたしの片想い中に、彼には3人もの元カノができていた。ひどくモテる彼には、わたしは不釣り合いだと信じて疑わない。
好きになったのは、中3の修学旅行でのことだった。一緒の班。それだけの理由でわたしは恋に落ちていた。それからは気が狂ったように彼を想った。告白して振られた時は、この世の終わりかと思った。嫌われてしまったのに、未だ彼を好きでいた。
二度と過ちは繰り返すまじと肝に銘じて、わたしは自分の気持ちを封じた。同じ高校に通うことがわかっても何も感じていないように。たとえ友達が彼を好きであってもそれを喜んでいるように。
自分の気持ちに嘘をつく度に苦しくなった。わたしの中が、乖離していった。苦しくて苦しくて、ついに昨夜眠れなかった。わたしはやけくそで、朝早くに家を飛び出した。
「あれ、なんか今日早くね? どしたん」
ひとりのわたしに話しかけたのは、なんと彼だった。どうして?
「いや別に……気分?」
「ふーん、じゃあ暇か。ちょっと来てもらってもいい?」
断る権利もなく、わたしは彼に付いて行った。着いたのは、彼のクラスの教室だった。
「あの、さ」
彼は背を向けたまま緊張したように言った。
「高校入ってから、君を好きになっていました。付き合ってくれませんか」
#秋恋
手を伸ばしても届かないもの。そんなものは、世の中に沢山ある。手が届かないから、努力して色々なものを捨てて手に入れようとする。
手に入れて少ししたらもう飽きるくせにね。
#大事にしたい
「ほらすぐ〇〇は拗ねるから」
何回話しかけても無視してくるから諦めたら、そう言われた。
「別にわたし拗ねてないし」
「そういうとこが拗ねてんでしょ」
そういう意図して言っていないのに、悲しいかな人間は過去の経験から相手の気持ちを推し量る。今回は合ってない。本当に拗ねそうだ。絶対に拗ねてやんないけど。
「で、なんの話なん?」
「もういい、大したことないもん」
あーあ、こういう自分が嫌いだ。拗ねているようにしか話すことができない自分が。そもそもかまって欲しいから話しかけたくせに。
「……俺が拗ねるよ?」
予想外の言葉に慌ててしまう。
「あっえっ、どういう、いやなんでそうなるん」
彼は頬をつんとつついて言った。
「そういうとこ、可愛いんだもん」
#時間よ止まれ