あのね! 今日〇〇ちゃんと一緒に帰ったんだ! あんまり話したことなかったんだけどね、思ってたより面白い子でね、話してたらあっという間に駅着いちゃったんだ! それでね、〇〇くんって勉強得意なの?って聞かれたから、ついそうだよ!って嘘ついちゃったけど、すっごく褒めてくれたから、この嘘も無駄じゃなかったんだなって思うんだ! へへへ、明日も一緒に帰れるといいな!
〇〇くんってどんな人なんだろうな。そう思って一緒に帰ろって話しかけた。いっつも職場でおちゃらけている彼が、何を考えているんだろうって。別に好きとかじゃ無いんだけどね。それで、話してく内に思ったんだ。これ中身詰まってないなって。相手のことを考えずにおちゃらけている感じが、すごく馬鹿に感じた。どうしてこの職場につけたのだろうって思うくらいに。どうやってあの頭で仕事をしているって思うくらいに。興味深いっていう点では面白かったけれど、もう2人で帰りたいとは思わないかな。
#踊るように
貝合わせ。所謂貝殻で行う神経衰弱だ。平安時代から行われているこの遊びを、ふとしてみたくなった。
蛤を剥ぐ。中身が抵抗してくるけれど、力の差で捻じ伏せた。中身は美味しくいただいて、外身を残しておく。これを満足するまで繰り返す。しっかり洗ってよく乾かした。そして、本来は貝殻の内側に絵が描かれているらしい。けれどわたしは不器用なので、和歌を書くことにした。
作っていくうちに、貴族の気分になっていくように感じる。貴族は貝合わせの貝は作らないはずなのに、どうしてこんなにも雅やかな気持ちになるのだろう? 知らず知らずのうちに感情移入しているのだろうか、それとも、
あ! すっかり頭から抜け落ちていたが、貝合わせは一人ではできないではないか! これが貴族とわたしの違いであろうかと、つくづく感じた。
#貝殻
青春。それは、人生で「あのころは良かった」と思う時期ランキングを作れば、かなり上位に君臨するのではないだろうか。若さと大人っぽさが上手い具合に絡まりあってつくられ、あーだこーだ言いながらも笑い合って成長していく。泣いたり笑ったり、蛇行しながらそれぞれ人生行路を歩んでいく。その輝かしき笑顔というのは、自由と苦しみの兆しを見せていくのであろう。
責任を親に押し付けられる時期というのは、疲れが残ることを知らない。だからこそ華やかな時代をつくることができるのであろう。
#きらめき
どうして靴下脱ぎっぱなしなの、どうしてシャンプーの詰め替えしてくれないの、どうして子どもが夜泣きしているのに気づかず寝続けるの。
日々の不満が少しずつ溜まっていく。最初は耐えうるものでも、いつの間にか耐えられなくなっていることに気づく。
どうしてそんなに怒るの、前はそんなこと言ってなかったじゃないか、どうしてそんなに長く寝るの。
お互いを理解していないことに気がつかない。歪みにも気づかず、少しずつ気持ちが冷めていく。後戻りができなくなる。
やがて、一緒に居るのがしんどくなる。
#些細なことでも
迷いや不安を消す。その比喩として「心を照らす」という表現が使われる。これは自分以外のものが起こさせている場合によく使われているイメージがある。では自尊心が照らす場合は?
#心の灯火