願い事が叶うやり方、君は知ってる?
神社で初詣とかお参りする?
流れ星にお願いする?
短冊にお願いごとをする?
私の地域では八月七日が七夕だけれど、一般的には今日、七月七日が七夕みたい。
七夕の時に、短冊にお願いごとを書いて、笹の枝に結んで、それが落ちると願い事が叶うっていうもの。
でも、これって、気づいたら落ちていて、願いをこめて書いた短冊が地面に落ちて、人に踏まれて、靴の跡とか付いてることがあるんだ。
なんだか、私の願い事を踏みにじってるみたい。
雑踏で溢れかえる都会のアーケード内、私は落ちている短冊を拾い上げる。
「願いが叶ってよかったね!」
そう笑顔で呟いた。
【願い事】
恋というのは一つの感情ではまとまらない。
燃え上がるような気持ちに、
たまに嫉妬してもやもやした気持ちに、
進展がなくて悲しい気持ち。
まるで、空模様。
朝焼けや夕焼けのように燃え上がって、
雲ってパッとしない空に、
雨が降っているように暗くなる。
恋心は空模様。
空も恋をしてるんだね。
私と一緒だね。
【空恋】
@ma_su0v0
ザザア……
潮騒の音が聞こえる。
ザザア……
潮騒と同じような、波音も聞こえている気がする。
ザザア……
この二つの重なりあう音は、何と何だろう。
足に、水のような感覚があった。靴は脱げているようで、素足に冷たさを感じた。
顔に、砂のような細かい感覚もある。うつ伏せに倒れているらしく、頬に痛みさえ感じた。
一つの音は、足元から聞こえる。きっと、海の音なのだろう。
一つの音は、頭から直接聞こえてきた。これはなんだろう。
波音に耳を澄ませて、重い身体を微かに動かして気づいた。
倒れている場所には、大きな血溜まりがあったことに。
ザザア……
これは、じぶんの血液の音なのだろうか。
ザザア……
波音に耳を澄ませて、静かに目を閉じた。
【波音に耳を澄ませて】
私の名前はサクラという。
もう何年もこの地域を見守っていた。
この間まで元気に走り回っていた子ども達は、いつの間にか大人になって、この地域を離れていった。
夏休みを目前とした中高生が、校門前を笑顔で通りすぎて行く。
輝かしいくらいの笑顔で、他愛のない会話をしている。
あんな子達は、いつも青い風をまとっていた。
またの名を、青春、と言う。
君たちも、いつかこの地域を離れて行くのだろう。
その時まで、私はこの青春している子達を温かく見守っていこうと思う。
青い風は、また私の近くを通りすぎて行った。
【青い風】
「サトウさーん、血圧測りますねー」
いつもと同じ朝が来た。
シャー、とカーテンをあけて、看護師が入ってきた。
身体が動かないので、看護師が手際よく布団から腕を取りだし、血圧を測り始めた。
「今日はいい天気だから、お散歩にでも外に出ましょうか?」
ベッドの横には車椅子がある。散歩といっても、誰かに介助してもらえないと外にも出ないし、車椅子にさえ座れない。
遠くへ行きたいな、
昔のように、ふらっとでかけて、遠くの知らない所に行きたい。
ついこの間のように、バイクに乗って、行けるところまで。
そう、バイクに乗って、事故ってこの様である。
あてもなく、ふらっと遠くへ行きたいのに。
「じゃあ、動かしますよー」
ベッドがギシリとなった。
今行ける、行かせてくれる、遠くへ。
【遠くへ行きたい】