どうしてハッピーエンドだけが受け入れられるのだろう。
幸福感だけをみんなは欲しているの?
俺はいわゆる創作活動をしている。
内容的には、ファンタジー系を書けば、パーティーの主要メンバーが尊い犠牲になったり、主人公が闇落ちしたり。
恋愛系を書けば、何をやっても報われず、手に入れた恋人さえも手放すか自分が身を引くかの二択を選ばせ幸せの道を閉ざしてみたり。
他人の不幸は蜜の味とはよくいったものだ。
現実世界ではハッピーエンドしか受け入れてもらえないのは理解できるが、ここは俺が作った人とストーリー。だからいくらでもバッドエンドが成立できるのだが……
「君はこの作品で何を伝えたいのかな? どんな人に読んでもらいたいの? そういうのがないなら連載は難しいね。独りよがりの作品止まりだよ」
もう、何回このセリフを聞いただろうか。
そろそろ俺にもハッピーエンドとして、作家デビュー、できませんかね?
【ハッピーエンド】
僕は人と目をあわせられない。
とてつもない恐怖心にかられ、手が震えて冷や汗が出てくる。
目をあわせる以前に、他人の視線がとてつもなく怖いのだ。
きっとあの人は僕の事を冷ややかな目でみている、変な行動したかな? 格好が変だった?、と、余計なことまで考えてしまう。
その生活に疲れて、疲れきって、僕は引きこもるようになった。家からでなければ誰からも見られることはないから。
しかし、そんな生活をしていたら、今度は家族の視線にさえも気持ち悪さが生まれた。
今まで一緒に生活していたはずなのに、拒否感が半端なかった。
家にも居場所がなくなり、外には出たくなくなり、僕の今の居場所は強いて言えば、ベランダと小さな庭。
雨の日は屋根の下のベランダで、晴れの日は本当にお気持ち程度の庭にいた。
そんな僕の居場所には、いつも先客がいる。その先客は、いつも僕のことを見つめてくる。でも、苦ではない。拒否反応もでない。ガン見で舐めるように僕のことを見つめてくるのにだ。
ベランダの先客は決まって鳥達。餌付けをしている訳でも巣を作っている訳でもないのに、雨宿りにきているのだろうか、毎度あってしまう。
庭の先客は猫。野良猫の通り道なのだろうか、我が物顔で庭を歩いている。ちょっかいをかけてみると、めちゃくちゃガン見してくる。可愛い。
人に見つめられると、本当に気持ち悪くて負の感情しかうまれないのに、こういう動物に見つめられるとほんわかな気持ちになる。
あーあ、どうして僕は人なんだろうなぁ。
【見つめられると】
※【安らかな瞳】の続き
綺麗な桜の花が咲いていた。もう春になっていたのだな、と、気付かされる。
最近は仕事も忙しく、身体も思い通りに動かなく、気圧の変化で頭痛もする。
あたりを気にしている暇なんてないくらいに多忙だった。
今日は花散らしの雨で、桜の花びらは若干落ち始め、地面には絵になるような花びらの道ができていた。
雨で、桜で、落ちた花びら。
ただそれだけなのに、何故か感傷的になる私。
いつからこんなに余裕のない日々をしているのだろう。
心に余裕がないと、こんな何気ない風景にも心打たれてしまうのだろうか。
春雨じゃ濡れて行こう
なんて、国語の時間に習った言葉を思い出す。
私は傘を畳む。春の雨は優しくて、疲れきっていた私の心を包むように洗い流してくれた。
My Heartのライフゲージが少し回復した気がした。
【My Heart】
空を飛べるのっていいよね。
人に生まれてきたから、空を飛ぶことはできない。
風を切って、大きく広げた翼にその風を受けて、身体全身で浮遊感を味わうって、どんな気持ちだろう。なれるものなら空を飛びたい。
そんな気持ちがあったから、人は飛行機や宇宙船を作ったのだろうか。
水の中を自由に泳げるのっていいよね。
人に生まれてきたから、永遠に水の中にいることはできない。
ずっと奥底の海底をみてみたいけど、いったいどうなっているのだろう。見たことのない生き物がきっと暮らしているんだ。
そんな気持ちがあったから、人は潜水艦を作ったのだろうか。
自分からは光を放てない。だから光を作り出す装置を作った。
自分からは超音波を放てない。だから超音波を受信する装置を作った。
ないものねだりだけでなく、ないなら作り出そうとする。それが人間の本質なのだ。
【ないものねだり】
私の大好きなぬいぐるみ。犬のぬいぐるみ。
もう綿は随分と昔にふんわり感はなくなって、今はぺっしゃんこ。
私は動物ではないけれど、すごく自分の好きな匂いがする。
耳の所は黒ずんできてるし、尻尾のところはよく引っ張り回していたから解れてきている。目も本来の色とは違う。
もう買ってもらって20年くらい経つだろうか、普通に考えたら捨てるべきモノである。
でも、私からしたら特別な存在なのだ。
特別な存在、と言ったら、通常、大切な人や動物を思い浮かべるだろうが、私の特別な存在は、この犬のぬいぐるみ。
一人で悲しい時も、怒られて辛い時も、どこかに行く時も、嬉しい時楽しい時も、いつでもこのぬいぐるみと一緒にいた。
これからも勿論一緒にいたい、特別な存在なんだ。
【特別な存在】