三月も半ばになると、ずいぶんと過ごしやすくなる。朝晩の冷え込みも今までよりも穏やかだ。
そろそろ、夜の散歩を再開しても良さそうだ。
俺は晴れていれば夜にジョギングや散歩をしていた。が、寒いのは苦手なので冬季はお休みしています。
でも、そろそろそれを再開してもよさそうな気候になってきた。
扉を開ける。まだ少し寒さがあった。我慢はできるくらいなので、俺は家をあとにする。
空を見ると、星が輝いている。月も煌々と輝いていた。冬のようにすぐそこに星が月がある訳ではないが、これもまた美しい。
歩きスマホならぬ、歩き夜空。同じ前方不注意だ。どちらもその世界に溶け込んでしまう。見いってしまう。
寒さに負けて夜の散歩を自粛していたが、この絵になる夜空をみると、また毎日月夜を見ながら散歩をしようと思ってしまうのだ。
【月夜】
もうすぐあの日が来る。
あの時、あちらこちらで言われた言葉は「絆」
それがなければ、ここまで復興できなかった。
子どもの名前にも、この字をつける人が多かっただろう。
なんでも感でも絆が繋ぐらしい。
亡くなってしまったあの人とも、今も絆で繋がっているだろうか。
奇跡で繋がった電話で、あの人は
「帰ってきちゃだめ!」
が、最期の言葉だった。
その日が近づく度に、その言葉が声が蘇る。
断とうにも断ちきれない人の結び付きを絆というらしい。
さようならも言えずに消えていったあの人とも、私はまだ絆が繋がっていると思う。
今日の空は雨上がり、とても爽やかな澄んだ空だった。
【絆】
※半分実話です。亡くなってはいない。
頑張り続けるママへ
たまには息抜きも大切だよ。
いつも気を張り続けたら疲れるでしょ。
誰かに監視されている訳でもないのだから、少しくらい手を抜いたって構わないんだよ。
全部完璧にするのは凄いと思う。
でも、それで潰れそうになるんだったら元も子もない。
心が擦りきれてしまいそうでしょ。
疲れたら休んでいいんだよ。
誰かを頼ってもいいんだよ。
泣きわめいたっていいんだよ。
ママが頑張っているのは伝わってるよ。
だからこそ、たまには休みなよ、って心配になるんだよ。
元気で明るいママのことがみんな好きだからね。
たまには自分が子どもみたいに、やりたいことをやっていいんだよ。
毎日ママは頑張っているんだから。頑張りすぎているんだから。
疲れきったママより
【たまには】
今日大好きな君に、伝えたい。
明日は大嫌いな君になるかもしれないから。
私の中には、何人かの人格が住み着いている。
解離性同一症と言われる、多重人格障害の持ち主。
今日は本体の私だけど、明日も君のことを大好きな私とは限らない。
もしかしたら、私のことを嫌いな私が、自分自身を殺そうとして、この世から消えてしまうかもしれない。
もしかしたら、もう一生私が戻ってこれないかもしれない。
もしかしたら、君のことが憎たらしくて手にかけてしまう私がでてくるかもしれない。
いつかくるかもしれない、もしかしたらを考えていても仕方がない。
今、私が私でいる間にやらなければいけないことは、一つだけ明確にわかっている。
大好きな君に、大好き、と伝えること。
言わないで後悔するより、見えない不安と戦ったりするより、今できることを今しよう。
「大好きなんだ、君のこと」
【大好きな君に】
三月二日、明日はひなまつり。小学校低学年の女子達はうきうきしていた。
「りかちゃん、雛人形かざったー?」
給食時間中、おかっぱ姿の女の子が、髪の長いりかちゃんに問う。
「もう二月の最初の方に飾ったよ!」
「はや!」
「早く飾らないと結婚早くできないらしいよ!」
「そうなんだ!」
この時期の小学生の夢は、お嫁さんが多い時期だろうか、女子トークの入り口のようなやりとりである。
三月三日、ひなまつり当日。
豪華なご飯を食べ、雛人形を飾って、小さな女の子がいる家庭は過ごしているだろう。
翌日、四日。りかちゃんの方から声をかけてきた。
「雛人形もう片付けたー?」
「え? まだだよ?」
「早く片付けないと、結婚遅くなるみたいだよ!」
「そうなの!?」
「早く出して早く片付ける、が、早くお嫁さんになる言い伝えだって」
「そうなんだ!」
小さいながらも女子は女子。
ひなまつり一つでも、女子トークには花が咲くのであった。
【ひなまつり】