ぬくぬくと過ごしていた年末年始が終わった。
世界は、いつものように動き出した。
朝夕はこんなに寒かったのか。
俺はマフラーに顔を埋めた。
寒くなければ、スマホを触りながら歩道を歩くところだが、寒すぎて手袋をしていてもポケットから手を出したくない。
なんなら、出来る限り肌を露出したくない。
年末年始はこたつに入ってごろごろしていた時間帯……俺は職場につくなり、時計を見てため息をついた。
そこへ、どん、と音を立てて書類が置かれる。
「年末年始の長期休暇に入る前にやれっていったよね?」
女性の上司が冷たい視線で俺に圧をかける。
外気温も寒さが身にしみたが、会社内でも背筋が凍るような冷たさを感じることになるとは。
【寒さが身にしみて】
今は18歳から成人、選挙権ももてるようになった。自立した立派な大人だ。
……と、言いたいところだが、実際のところ、まだまだ解禁ができるのは、20歳になってから。
お酒とタバコは二十歳から。このキャッチコピーはそのままである。
140年間程、成人は20歳と定められていたのだから仕方がない。
でも、だからといって、20歳になれば立派な大人なのかと言えば、そうでもない。
大学ニートなる親のすねかじりをする人も少なくはないし、初めてのお酒やギャンブルで身を滅ぼす人も多い。
逆に、中学卒業して高校に行かなくとも、15歳で立派に仕事をしている人だっている。
区切りなんて、あるようでない。
二十歳すぎれば只の人、という言葉がある。
そうなのだ、とりあえず、子、という意味合いはなくなり、一般の、人、になったのだ。
20歳になろうとしているあなたは、もしくは、20歳になった時のあなたは、きちんと、只の人、として生きていますか?
【20歳】
最初は光なんてなかった。暗闇の中、ただ夜空を見上げていた。
寒くて心細くて、すぐに家の中へと戻る。
三日後、光が生まれた。まだ小さくて、でも煌々と光輝き、存在感をアピールしていた。
何もないところから生まれた三日月は、これから満月に向けて、どんどん光満ちていく。
何もない新月の時は、すぐ家へと戻ったけれど、少しでも光が見えると長居してしまう。
ねぇ、知ってる? 三日月にも流れ星と一緒で、願い事が叶うって言われているんだよ。
私は三日月に向かってお辞儀をしてお願いをした。
神秘的なおまじない、信じるか信じないかはあなた次第♪
そっと寝静まった家へと戻った。
【三日月】
冬の町中はモノクロに溢れている。
雪の白色に建築物のグレー、黒を基調とした温かい服装。雪が降りだしそうな雲行きだと、灰色に磨きがかかる。
なんだか、空気や気持ちまでモノクロになってしまう。
だから私は、奇抜な服装をしている。
少しでも明るく見えるように、桃色な髪、オーバーは水色のふわふわした服装、靴は緑色に近い青。
パステルに近い彩りで、モノクロの世界に淡く輝く。暗い世界にほんのりと。
田舎育ちの私は、ここではすごく悪目立ちしていた。モノクロに染まらない私には、雪よりも冷たい視線を感じていた。
だから、成人式を終えた今、私は都会に足を踏み入れる。
周りを見回すと、モノクロの色があまりにも少なかった。
煌々と光る大きなモニター、髪色だってオレンジや真っ赤、黄緑色……様々なヘアカラー、クリスマスが終わっているのに、水色と黄色のイルミネーション。
都会には色があった。人が温かいのかと言えば、そうとも限らないかもしれないが、田舎にいた時のような視線も感じない。
色とりどりで、少なくても、心にも色が付いた気がした。
【色とりどり】
雪はひらひらと舞いとても綺麗に見えるのは、あまり雪をお目にかからない都会の人の幻想である。
雪が降ると聞けば、何時に起きようか計画をたてて、寒いと思って着こんで雪掻きをすれば、すぐに暑くなる。
腰は痛くなるし、腕はぷるぷるしてくるし、足はがくがくするし、たまに背中はつりそうになるし、指先はがちがちになるし、末端は隠していないと取れるんじゃないかと思う。
みんなは綺麗な雪しかみていないようだが、雪国にとってはすごい重労働である。
ただ、一つだけ言えることがある。
降らないにこしたことはないが、
降らなければ降らないで、なぜか、物足りない。
あれ? 今、冬だよね?
【雪】