嫌なことがあっても
挫けることがあっても
明日は、きっと良いことある……
と、信じ
たった1人
寂しい部屋で
涙を流しながら、眠る
慰めてくれる、母はいない
悪い人を叱ってくれる、父もいない
それでも
見えない明日を夢見て
今日もまた眠る
いつか、必ず
誰もが幸せになれる世界が訪れる
と、願って
ー夢見る少女のようにー
めげない
逃げない
諦めない
夢に向かって
ーさあ行こうー
続く長雨
傘ばかりの通学路
下ばかりを見つめる日々に
気持ちも憂鬱になる
何か、良い事ないかな……
と、思う日も多くなった
「あれは……」
久々の大雨の後
道の至る所に水たまりが
太陽の光に反射して
キラキラと波打っている
幾つもの水たまりの間を
拭うように歩む
いつの間にか、風は止み
真っ黒な水たまりに
別の色が射していた
赤、橙、黄、緑、青、藍、紫……7色?
空を見上げれば
真っ黒な雲の中
色鮮やかな虹が、浮かび上がっていた
雨の日も、悪くはないな……
梅雨の季節が、少しだけ、好きになった
ー水たまりに映る空ー
幼い頃からの幼馴染み
ケンカもした
笑いあった
良い思い出も、たくさん出来て……
けど最近、妙な感情が湧く
寂しいような
心残りのような……
それでも
いつも通りの笑顔で
感情を圧し殺して
再び会う
「好きな人ができた
もう、会えないかもしれない……」
突然の告白
胸がざわめく
鼓動が高鳴る
感情が渦巻く……
「…………」
上手く言葉にできない……
この感情は、なに……?
ー恋か、愛か、それともー
突然の土砂降り
慌てて軒先に駆け込むが、止む気配はない
服は、ずぶ濡れ
天気予報も当てにならない
『折り畳み傘、持ってくれば良かった……』
後悔しても、もう遅い
暫く、雨上がりを待つことにした
タッタッタッタッ……
項垂れてると、駆け足の音が、こちらに近づいてくる
「あーっ!参ったーっ!やられたー‼」
男性の声
見ると、かなり長い間、雨に打たれてたのか、
服が、ずぶ濡れになりながら、走っていた
「こんな天気になるなんて、言ってなかったじゃん‼」
多分、天気予報士に対しての独り言だろう……
私と同じ反応に、クスッと笑ってしまった
「なに?にやけて、やけに楽しそうじゃん?」
「センパ……」
驚いた
顔を伏せてたから、誰だか分からなかったが、
まさか、上司だったとは……
「お互い、傘を忘れるなんて、奇遇だね~
これじゃあ、怒るに怒れないな」
「センパイこそ、
後輩の目の前で、恥見られて、恥ずかしくないんですか?」
「恥ずかしくは、ないが……」
と、目をキョロキョロ泳がせている
「せ、センパイは、彼女とか、居ないんですか?
このくらい、我慢して下さい!
私だって、他に行き場がないんですから‼」
「も、申し訳ない……
なかなか、雨に打たれる事、ないもんで……」
「いいから、向こうを向いててください‼」
気恥ずかしい……
どう見られてるのかは分からないが、
姿見がない以上、直すにも直せない……
「お二人さん、お困りかね?」
突然、背後から声がした
「おばあさん!もしかして、聞こえてましたか?」
「うるさくって、すみません……
突然の雨に打たれてしまって、
暫く、雨宿りさせて下さいませんか?」
「いやいや、いいんだよ~ぉ
しかし、お二人さん、お急ぎじゃろ?
傘をやるよ」
「「い、いいんですか⁉」」
「ホ、ホ、ホ、息ピッタリじゃの~?ほれ」
手渡されたのは、1本の雨傘だった
「失礼ですが、もう1本、貸して頂くことは……?」
「申し訳ないが、今貸せるのは、これだけでのぉ
他は使われて、手元に無いのじゃ
申し訳ないのぉ……」
「そ、そうですか……」
途方に暮れる2人
仕方なく、1本でどうにかすることにした
「お貸し頂いて、本当に有難う御座います
必ず、返しに来ますから!」
「いやいや、いいんじゃよ
ワシは、お留守番じゃから、気にせんでええ」
「そうは言われましても……」
と、困り果てる2人
「何があったかは分からんが、仲良くしいや
ホ、ホ、ホ」
「あ、有難う御座います……」
妙な気遣いをされ、
私たちは、その場に居続ける訳にもいかず、
1本の雨傘を、2人でシェアすることにした
誰からも見られてない事を祈って……
ー傘の中の秘密ー