「はじめまして 妖精さん
あなたのお名前は 何ですか?」
目の前に 突然現れた妖精
姿は真っ白で 景色が透けて見えた
小さな羽を必死に羽ばたかせ ヒョコヒョコと動いている
何か ジェスチャーをしてるようだ
必死さは伝わってくるが 何を伝えてるのか 分からない
「ごめんなさい 妖精さん
私には あなたが何を伝えてるのか 分からなくて……」
それでも 何かを必死に伝えてる妖精──
どうしよう……
未知との遭遇 初めての体験
他に相談できる人もいなくて……
困りに困った挙げ句
「ごめんなさい 妖精さん
私には 力になれそうにないわ
どこかで 他の人の手を借りてちょうだい」
窓の外へと 妖精を移動させようとした
が 触れる前に 手をすり抜けた
何かの間違いかと思い 目を疑った
触れた感触は どこにもない
それでも尚 妖精は 必死に何かを伝えている
困り果てた私──
「今夜はもう遅いし…… とりあえず 寝ましょうか」
妖精に語りかけ 部屋の明かりを消し ベッドに潜り込んだ
暗闇の中を 泡白く光る 妖精
あっちへ こっちへ…… まるで 雪が踊ってるよう
妖精って 寝ないのかな……
ボーッと眺めてる内に いつしか眠りに落ちていた
──翌朝
あれは 夢だったのだろうか?
どこを見渡しても 白くて小さな姿はない
消えちゃったのかな……
ヤバい! ボーッとしてられない!!
いつも通り 支度を終え 学校に向かう
今日から4月 クラス替えの日
朝から晴天の空──
何かいい事 ありそうな気がした
ーはじめましてー
卒業式 に 離任式
別れあり 涙あり
3月は別れの季節だ
別れがあれば 出会いもある
別れは惜しいけど
"再会" を 期待して
"bye bye ..." ではなく
"さようなら" でもなく
また会える日までの 暫しの別れ──
涙を堪えて 元気よく 笑顔で
"またね!" と 大きく手を振った
"また 必ず会えるよね……" と 期待して
ーまたね!ー
降り積もった雪を溶かし
真っ白な景色に 彩りを与える
北風から南風へ
空の青さが 深くなってゆく
日の長さは延び 暖かさがもどり
枯れた草木に 淡い緑の芽が伸びる
人々の目も
下を向く風景から 空を見上げる景色へと 移り変わって──
ある日 少女がやってきた
長い髪をなびかせて 靴音を鳴らしながら
彼女は言った
「あなたには才能がある
だから 私と一緒に やろう?」
半ば強引に付き合わされるがまま 俺たちは伴奏を組んだ
学校の音楽室
風とともに舞う花びら 奏でる旋律──
日々 練習に付き合わされるに連れ
春風とともに 俺たちの気持ちも 駆け抜けてった
ー春風とともにー ~四月は君の嘘 より~
ふと気付けば 涙が出てる時がある
悲しくはない 思い出してもない 何の感情も抱いてないのに……
"不思議だな" とは思っていた
だが 過去に友達との関わりで 同じ現象を見ていたから
"そんな事もあるか" と 気にも止めなかった
しかし 事態は一変した
寝ても覚めても 体調は悪くなる一方──
日に日に悪くなり 市販薬が効かなくなった
"これはおかしい" と 精神科を受診した
主治医は皆口を揃えて 『分からないね』と 答えた
精神疾患ではない となると 何なんだ……?
思い当たる症状を頼りに サイトを検索した
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過度のストレスにより 無意識に涙が出る事がある
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過度のストレス……?
確かに 過度のストレスは感じていた
が 耐えられない程ではない
皆と同じように 学業をして 課題をして 生活をして
けど 睡眠時間は少なくて……その何が『過度のストレス』なんだ?
当時の私には "過度のストレスの概念" が 分かってなかった
ー涙ー
綺麗なモノを キレイと感じ取る心
美しいモノを ステキと感じ取る心
一瞬の輝きを 儚さと感じ取る心──
それらを構成してる
光、音、触れた感触、味、匂いを感じ取る 五感
どこにでも行ける、何でも話せる 身体
それらにも感謝だが
やはり
"幸せを感じ取れる心" があるから
人は 幸せでいられるのだろう
姿は見えないが いつも側にある
当たり前すぎるのに
他の感情に支配され 忙しくなると
幸せを感じ取る心の余裕は なくなってゆく……
いつも側にある "小さな幸せ"
いつしか 人は
見失ってるのかもしれない
ー小さな幸せー