あの人は
遠くの地へ行ってしまった
会いたくても
連絡の取れない遠くの国へ
学校は違えど幼馴染みで
喧嘩もした
我が儘も言い合った
異性だとは微塵も感じさせなかったあの人
昔の日々に思い馳せても
今では戻らぬ虚しさ
もう半年
毎日のように見ていた録画や写真も
今では見なくなった
寂しさが募る、悲しみも増える
そんな日々の繰り返し……
また、どこかで会えるよね──
心のどこかでそう願って
暫しの間 bye bye...
ーbye bye...ー
「綺麗だね~」
窓越しに、長い髪を掻き上げる背中
「さっき見たぁ?めっちゃ綺麗だったでしょ?」
振り返る満面の笑顔
3月の終わり
今年は暖冬だった影響で、桜の開花が早まっていた
時々吹き込む春一番の嵐に、桜の花弁が耳を掠める
「まさか、見れるなんてな」
制服姿に身を包んだ胸元
校章がキラッと光を放つ
今日は離任式
今年卒業を迎えた俺達も、母校を訪れるため、通い慣れた通学路を通っていた
「今日でこの通学路も最後か…… 先生は、誰が移動しちゃうんだろうね?」
悲しげな顔をし、遥か遠くを見つめる君
「そだな、最後だな 誰だろね?」
答えに迷う俺なんかを横目に、君は桜散る景色を眺めている
「この景色も、これで最後か……」"ビュールルルル"
突然、強烈な風が窓から吹き込んだ
「え~っ?何か言ったぁ~?聞こえな~い!」
君は、乱れた髪を押さえることで、必死みたい
「なんでもない!ただの独り言!」"ビュールルルル"
尚も強く吹く風
今日の日が終われば、君と過ごしてきた日々ともお別れか
別々の学校 別々の通学路
住む県だって変わるというのに
「うわぁ~、凄い! 見て、桜吹雪だよ?」
俺の思いとは裏腹に、はしゃいぎ楽しむ君
早咲きの桜なんかより、離任式の事なんかより……
楽しそうな君の姿が愛おしくて、たまらないんだ
ー君と見た景色ー
人は、人生で何度、手を繋ぐのだろう
生まれた時は……
幼少期の頃は……
青年になった頃は……
大人になった頃は……
老後は……
多分、既に数えきれない
これほど多く手を繋いでいても、記憶に残るのは数える程度
『皆、必死で生きている』
その証拠なのかもしれない
人によって、手の繋ぎ方はそれぞれだ
同性 異性
温かな手 冷たい手
力強く握り返す手 フワッと乗せる手
ゴワゴワな手 軟らかな手……
まだまだ存在するのかもしれないが、今上げただけでも、かなりの数がある
それは、見た目によらない
もしかしたら、手を繋いだ人に対する、心の鏡なのかもしれない
手を繋いで、これからどこへ行こうか?
その先に、幸せがあることを、心より願う
ー手を繋いでー
昔、お気に入りのサイトがあった
詩を書き綴るためだけに使ってたサイト
いつからか使わなくなり、久々にログインしたら、閲覧数が異常に伸びていた
自分は、そんな人じゃない
自分は、こんなに評価される人じゃない
ここに居ちゃイケない人なんだ
焦った自分は、これまで書き綴った投稿を全て消し、アカウントを消し去った
それから何年経っただろう……
あの頃の自分に会いたくて
あのサイトなら、あの頃に書き綴ってた素直な感覚に出会えそうな気がして……
ある日の夜、必死にサイト検索した
何度検索しても、サイト名で検索しても、あのサイトは跡形もなく消え去っていた
それもそのはず、時代の変化に追い付けなくなったモノは、時の流れと共に姿を消し去るしかなかったのだ
使いやすかったのに
あんなに書き心地が良かったのに……
あんなに書き綴れたサイトは、他にないんだよ
詩を書けるサイトは、他にもあった
何なら、投稿アプリも、幾つも普及していた
けど、どれを試しても、自分には合わなかった
どこもかしこも『交流・評価・コミュニケーション』
そんな能力、その頃には微塵もなかった
あったとしたって、心が傷つくだけ……
もう、痛み苦しむのは嫌なんだよ
書き綴ってるときだけは、素直で自由でいたい……
時代の変化に追い付けず、あの頃のサイトは、この世から無くなってた事は知っていた
でも、素直に書き綴れた感覚は、あのサイトでしか味わえなかった
あのサイトに出会いたい……
まだ、素直で自由に書き綴っていた、あの頃の自分に出会いたい……
そう思いながら、サイトやアプリを転々とし、あの頃の自分を探し続けた
良かったモノ
時代の変化には追い付けなくとも、大切なものは、確かに存在してたんだ
姿形はなくなろうとも、今でも心の中で生き続けてる
あの頃の自分は、どこに居ますか?
今でも心は、お元気ですか?
体は辛いけど、大丈夫
心は少し廃れたけど、今でも綴ることは、気が向いたときに続けてるよ
あの頃、自然を素直に感じてたあの頃に戻りたい
もう戻れないけど、自由に書き綴れてた感覚を取り戻したい
そう願って、今もあの頃のサイトを求めて彷徨い続けてる
ーどこ?ー
昔は書くことが大好きだった
長い文章は書けないから、詩で思い付いたことをそのまま書き綴っていた
あの頃の文章力が欲しい
今となっては発想力も乏しくなって、四季の移ろいも、時の流れも感じなくなってった
あの頃、何を感じ、何を考え、何を思っていたのか……
まだ希望を内に秘めていた頃の輝きが、痛く眩しいんだ
あの頃に戻りたい
辛い思いをするのは嫌だから、肉体はこのままで、心の内だけキラキラ輝いていたあの頃に戻りたい
そう考えると、辛く踠いてたあの頃
辛かったけど、とても大好きな思いを秘めていたんだなと、つくづく思う
あの頃に戻りたい
もし、またあの頃に戻れたなら、大好きな詩を心置きなく綴りたい
あの頃の自分は、大嫌いだったけど
今となっては、踠き苦しみながらも、未来に夢踊らせてた自分に、恋してたんだな
大好きだよ、あの頃の自分へ
ー大好きー