〈静寂に包まれた部屋〉
うまい棒に上から均等な力を加えると縦に四等分されるのだと友人は言った。
やったことが無いと私が言ったので、その次の日に、友人がコンソメ味とポタージュ味のうまい棒を用意してきた。
「本当にやるのか、学校で!」
私はけらけら笑いながら言った。
冬のあの日のために、参考書や問題集と睨めっこする学友がいる教室で、程よい騒めきのなか、机の上に置いた二本のうまい棒の前で腕を組む。
ほら、やってみなと友人に催促されて、私はコンソメ味のうまい棒に両の手を縦に並ばせてのせる。
バリ、、
わ、
バリバリバリッ
「え!え!」と私は興奮して声を出す。
「はよ開けえ」
袋をゆっくりと開けると、綺麗に四等分されたオレンジ色の駄菓子が!
「おおおおお!」
すごい、すごい、と私は幼子のようにはしゃいで、少し周囲の視線をよろしくない形で集めたが、意に介さず。
友人とコンソメ味のうまい棒を食べていると、横からぬっとまた別の友人が来て、ポタージュ味のうまい棒に手をのせた。
バリバリバリ。
満足そうな顔を浮かべたその友人は、割ったそれを食べるのかと思いきや、ポタージュ味は苦手だといい、さっさと自席に戻っていった。
バリバリと音を鳴らしうまい棒を食べ終えてマスクを口に戻したが、喋る度にその中がコンソメ味とポタージュ味になることに気がついた。
うわ、と声をあげまた友人とけらけら笑う。
ゴミを捨て終えた頃に鳴った予鈴。
静かな空間が作り出され、私も友人と離れ自席に戻り、それに混じる。
はっ、と息を吐くと、また鮮やかな香りがした。
けらけらと笑う声がまた聞こえた。
〈上手くいかなくたっていい〉
人生は苦である。生きるに値しない。無意味である。
しかし、だからと言って、
容易に人生を終わらせることができない。
自死するほど精神が追い詰めらることもなく、
勇気もなく、だからと言って、人生に価値を創造することが「正」というような思想に乗ることはない。
食って寝る。以上。それでいいなら、そのままで。
なんだか腑に落ちないのなら、
こういうのはどうだろうか。
人生は苦である。生きるに値しない。無意味である。
それ故、人生とは死ぬまでの暇つぶし。遊べばよい。
悲しみも怒りも虚しさも、噛み噛み噛み。
辛くて辛くて辛くて、死にたい死にたい死にたい。
それも噛み噛み噛み。
あの辛さは何だったのだろう。今はこんなに元気なのに。拍子抜け。それも噛み噛み噛み。
童心に帰って旧友と笑い笑い笑い。さあ噛み噛み噛み。
あんなに死にたがっていたのに、あんなに人生は無意味と言っていたのに、まだ生きたいと、今際の際に。
それも一興。噛み噛み噛み。
何?芯が無いだって?それも噛み噛み噛み。
いいや、芯ならあるさ。人生は、無意味!
〈私の名前〉
気づきました。
このお題、昨年と同じです。
昨年の同じ日に、出されたものです。
……おもしろい。
―――――――――――――――
私の名前は、ひとつ、説明が要ります。
名字が少々特殊でして。
いや、なんてことは無いのですよ、
国が変われば腐るほど聞く名ですから。
でもね、ここじゃあ、ひとつ、説明しておきたくなるのです。
―――私は、あなた方と一緒です。なんら変わりありません。同じです―――
……今のところ、上手くいっておりませんね。
〈後悔〉
この泥くさいものが嫌いです。
いつもついてまわってきます。
これが無ければ困るのでしょうが、
今の私にとっては最早一切の元凶です。
常に私についていますが、
私がそれと分かり合えたことなど無く、
どんなときも思い通りにいきません。
私は其奴を締めあげます。
___私の、言葉を。
「ありがとう」
もう此処にはいない君へ
二度と会えない君へ
どうしたって言葉が伝わらない、君へ
いつもそばにいてくれた、君へ
もう会えないさ。天国なんて、死後の世界なんて、
ないんだから。
仮にね、会えたとしよう。
でもね、君に言葉は伝わらないさ。
そうならば、私は君を、優しく撫でよう。
愛しい君へ、ありがとう、そう呟きながら。