〈静寂に包まれた部屋〉
うまい棒に上から均等に力を加えると縦に四等分されるのだと友人は言った。
やったことが無いと私が言ったので、その次の日に、友人がコンソメ味とポタージュ味のうまい棒を用意してきた。
「本当にやるのか、学校で!」
私はけらけら笑いながら言った。
冬のあの日のために、参考書や問題集と睨めっこする学友がいる教室で、程よい騒めきのなか、机の上に置いた二本のうまい棒の前で腕を組む。
ほら、やってみなと友人に催促されて、私はコンソメ味のうまい棒に両の手を縦に並ばせてのせる。
バリ、、
わ、
バリバリバリッ
「え!え!」と私は興奮して声を出す。
「はよ開けえ」
袋をゆっくりと開けると、綺麗に四等分されたオレンジ色の駄菓子が!
「おおおおお!」
すごい、すごい、と私は幼子のようにはしゃいで、少し周囲の視線をよろしくない形で集めたが、意に介さず。
友人とコンソメ味のうまい棒を食べていると、横からぬっとまた別の友人が来て、ポタージュ味のうまい棒に手をのせた。
バリバリバリ。
満足そうな顔を浮かべたその友人は、割ったそれを食べるのかと思いきや、ポタージュ味は苦手だといい、さっさと自席に戻っていった。
バリバリと音を鳴らしうまい棒を食べ終えてマスクを口に戻したが、喋る度にその中がコンソメ味とポタージュ味になることに気がついた。
うわ、と声をあげまた友人とけらけら笑う。
ゴミを捨て終えた頃に鳴った予鈴。
静かな空間が作り出され、私も友人と離れ自席に戻り、それに混じる。
はっ、と息を吐くと、また鮮やかな香りがした。
けらけらと笑う声がまた聞こえた。
9/29/2023, 4:09:21 PM