鳥かごの中にいる間は安心だと思っていた
脅威に曝されることもなく
愛を感じられると思っていた
いつからだろう
愛されなくなったと感じたのは
愛されなくなった鳥かごの中は
ただただ虚無感しかなかった
自由に羽ばたいている鳥たちが羨ましいと
初めて思った
それまではわたしが世界一幸せだと思っていたはずなのに
【鳥かご】
孤独だった
周りがみんな敵に見えて
怖かった
だから敵が来ないように
高いたかい壁を四方に作って
本当の孤独になった
ある日そこからやはり出ようと思い立ったけれど
自分が作った頑丈すぎる壁が自分で壊せなかった
わたしは毎日必死で壁を壊した
びくともしない
これを越えるしかないんだ…
そこから毎日必死で壁をよじ登った
くる日も来る日ものぼって
何年もかけて壁の上にたどり着いた
つぎは、登った分だけ降りなきゃいけない
怖かった
疲れた
悲しくなった
でも、壁の上に登ったら
下からたくさんの声が聞こえてきた
待ってたよおかえり!
何してるの早く降りておいで!
ほらこのロープ使っていいよ!
あたたかかった。
敵じゃなかったんだ…
【遠い日の記憶】
さよならもなかった
うちから5分とかからないマンションに住みたいって
そう言ったのはあなただったのに
ある日突然
しばらく距離を置きたい
これからも一緒にいたいから
そう言ったよね
それなのに
わたしはそれを忠実に守ったつもりだったのに
ある日行ったらもう
そこには誰もいなくて
あなたの部屋に置いてたモノが
パンダの箱に入れてうちに送ってきた
パンダは何も悪くないのに
わたしはパンダの箱が怖くて開けられなかった
涙も出なかった
でもそれがあなたの出した答えなら
終わりにしよう
そう思うしかなかった
月が綺麗な夜だった
【終わりにしよう】
初めての運動会
わたしはなんでみんなの前で走らなきゃいけないのか
どうしてもわからなかった
ピストルみたいなものをいつもの先生が持っていて
なんだかとても怖そうに見えた
何もかもがいつもと違っていて
頑張れとか大きな声がたくさん聞こえた
わたしは帰りたかった
どうしてこんなみんなが見てる前で走らなくちゃいけないの?
わたしはピストルが鳴っても走らなかった
スタート地点に立っていたみんなはピストルと同時に行ってしまった
ぼんやり立っていたら
お父さんの手がそっとわたしの手を握った
わたしはお父さんに嫌なんだね、でも今日だけやんか
と言われて
手をとりあって一緒に最後まで走った
切なくて悲しくてあったかかった
【手をとりあって】
LINEの通知は切ってるのに
なぜかって、それは気にしてしまって
なにも手につかなくなりそうで怖くて
でも本当は気になって何度も開いてる
たった1件のLINEが欲しいから
自分の送ったLINE読んだかな、読んだかなって
何回も見たりして
切ってる意味ないじゃんってくらい見ちゃって
でも読んだらなんて思うかな、なんて
つい気にしてしまうから送ったLINEが大丈夫か確認したりして
本当にバカみたいだけどドキドキして。
明日の午後は空いてますか?
【1件のLINE】