「将来、何してると思う?」
少しだけ涼しい風が流れ出した放課後の教室
溶けたアイスが指に触れるのを阻止しながら友人が尋ねてきた。
手元の"GAME OVER"とかかれたゲーム機にもう一度リトライする。
「無視すんなよ〜」
「うるせーなー、考えた事ねーよ」
服に落ちたコーンの欠片を手で拾いながら「ふーん」と聞いておいたくせに興味がない声を出す。
「俺ね〜 花屋になりたいんだよね〜」
「聞いて欲しかっただけだろ お前」
「せいかーい 小さい頃から好きなんだよね〜」
そんな言葉を聞いて羨ましくなった。
かっこいいと思った。
俺は何も思いつかないから。
BGMも、エフェクトも、必殺技も、リトライもない。
俺はかっこよくない1度きり。
でも、きっと見つかると未来に後回しにし続ける。
また、"GAME OVER"になった画面を見つめる。
「…お前 凄いな 夢決まってて 俺決まってないから」
「別にお前のペースでいいだろ そうじゃなきゃおもんねーじゃん」
「……ほんとお前 かっけえーよ」
「ガチ? 照れるな〜テレテレ」
…焦ってたら何でもおもしろくねーよな。
かっこよくはないけど1度きり。
俺のペースで。
「お前の花屋 毎日通うわ」
「マジ! お客さん あざす!」
"GAME CLEAR"
新たな画面を見てそう決意した。
『未来』
「…暑つすぎ」
生い茂る木の葉のおかげで直射に熱されていないだけで、風無し整わないの永遠サウナ状態。
簡単に言っても簡単に言わなくても地獄。
学校裏の小高い山には、毎年紫陽花が咲く。
「綺麗らしいから見に行こうぜ!」
と友達に誘われたが夏風邪を拗らせたらしい。
近いし見舞いがてら写真でも撮っといてやるかと登ったが、太陽が張り切っているらしくこの有様だ。
風も頑張って働いて欲しい。
10分ほど経って目的の場所へ登り着いた。
すぐの距離なのにもう汗だくだ。
水を飲みながら紫陽花が咲いているであろう場所を見た。
「…マジか……枯れてる」
時期が少しズレてしまったのか紫陽花は花が茶色く萎れていた。
これまでの暑さを乗り越えて来た為、ショックだったがこれ以上いても仕方がないと帰りに足を向けた時、足元の枯れた紫陽花の上にアマガエルが飛び乗り、少しだけ雨粒が残っていたのか体が水を吸っていた。
枯れた花と濡れた緑色がなんだか綺麗でおもむろに写真を撮る。
「…これはこれでいいかも」
猛暑に近い暑さの中で少しだけ涼しい息が吸え、また帰りに足を向けた。
“あじさい”
僕は今日、分岐点に来ている。
というか、いつも来ている。
十字路だ。通学路の
僕はいつものように立ち止まって、息を吸って、足を一歩前に出す。
ドンッ
···と、言うこともなく普通に前進しただけだった。
今日も食パン少女は現れなかったようだ。
「街」