鵜蛙

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「将来、何してると思う?」
少しだけ涼しい風が流れ出した放課後の教室
溶けたアイスが指に触れるのを阻止しながら友人が尋ねてきた。
手元の"GAME OVER"とかかれたゲーム機にもう一度リトライする。

「無視すんなよ〜」
「うるせーなー、考えた事ねーよ」

服に落ちたコーンの欠片を手で拾いながら「ふーん」と聞いておいたくせに興味がない声を出す。

「俺ね〜 花屋になりたいんだよね〜」
「聞いて欲しかっただけだろ お前」
「せいかーい 小さい頃から好きなんだよね〜」

そんな言葉を聞いて羨ましくなった。
かっこいいと思った。
俺は何も思いつかないから。
BGMも、エフェクトも、必殺技も、リトライもない。
俺はかっこよくない1度きり。
でも、きっと見つかると未来に後回しにし続ける。
また、"GAME OVER"になった画面を見つめる。

「…お前 凄いな 夢決まってて 俺決まってないから」
「別にお前のペースでいいだろ そうじゃなきゃおもんねーじゃん」
「……ほんとお前 かっけえーよ」
「ガチ? 照れるな〜テレテレ」

…焦ってたら何でもおもしろくねーよな。
かっこよくはないけど1度きり。
俺のペースで。

「お前の花屋 毎日通うわ」
「マジ! お客さん あざす!」

"GAME CLEAR"
新たな画面を見てそう決意した。


『未来』

6/17/2024, 5:31:51 PM