他の誰よりも、ずっとあなたを見てきたから
他の誰よりも、ずっとあなたを知っている気になっていた
でも勘違いしていたみたい
そりゃそうだ、あなたが見ていた世界はもっと広かった
もっといろんな人と出会って、関わって、知っていた
そして同じようにいろんな人に知られていた
あなたを一番知ってる人間ではなくなってしまった
あなたがをすごく遠い存在に感じた
誰よりも、ずっと大好きで
誰よりも、ずっと一緒にいたいあなただから
誰よりも、ずっとあなたを知っている自分がいいのに
7月の午後6時
人気のない肌寒い海岸を照らす温かいオレンジの光
水平線に沈み行く夕日をただひたすら眺めていた
「…死ぬにはいい日だな」
靴を脱ぎ捨てて美しい青色の海に足を踏み入れる
ひんやりと冷たい水の中をひたすら進んだ
半分ほど沈んだ夕日に向かってひたすら進んだ
もっと奥へ、もっと、もっと
いつの間にか足がつかないところにまで来ていた
深呼吸を一つして、体を沈める
もう苦しまなくていいんだ
一通りもがき苦しんで、意識を手放した
君の瞳を見つめる
吸い込まれてしまいそうな美しい瞳
この美しさが永遠であればいいと思った
生きてさえいればいい
息ができていればいい
生きるための場所があればいい
眠るための場所があればいい
生きるための食物があればいい
喉を潤す水があればいい
生きるための衣服があればいい
自分のための戦闘服があればいい
幸せじゃなくてもいい
苦しんでもいい
嫌われてもいい
迷惑をかけてもいい
周りに何を言われても気にしなくていい
死にたいと思ってもいい
死にたいと口に出してもいい
ただ、死ななければいい
命を繋ぐことだけを優先していい
生きることだけに必死になればいい
あとは何も考えなくていい
生きてさえいればいい
それだけでいい
もしひとつだけ願いが叶うなら
大好きで大嫌いなあんたに殺されたい
最期に見るのはあんたの顔がいいんだ
だから頼むよ
その引き金を引いてくれないか