93日目


初めは一目見たいだけだった
貴方の近くに行ってその瞳に映りたかった
だから私は危険な契約をした
みんなに止められてもそれが私の望みだったから

でも直接会った貴方はやっぱり素敵で
瞳に映るだけじゃ満足できなかった
貴方と幸せになりたいと願ってしまった
だけど近くに行ったからこそ気づいてしまう
貴方の瞳は彼女を追いかけていると

私と貴方の幸せはきっと共存しない
ならせめて貴方だけでも幸せになって
他の誰かに向いたあなたの笑顔を見るのは辛いから
早く海の泡となって消えてしまいたい


#人魚姫

92日目


果たして
夏が巡ってきたのだろうか
僕たちが夏に逢いに来たのだろうか

前者ならおかえり、夏
後者ならただいま、夏 が適切だろう

なんて考えては見たものの
そこに夏があるという事実は変わらないのだから
きっとどちらでもいいのだろう

91日目


ガタッ
ペットボトルの落ちる音がして
無言でコーラが差し出された
私は困惑の表情で隣に立つ君を見るが
君は無言で差し出すのみだ

ありがとう
そう言って私は蓋を開けた
プシュッ
軽やかな音とともに冷たい液体が喉を潤す
特別美味しく感じたのは何故だろう
一気に飲むのが勿体なくて
ぬるくなるのも厭わず残りをそっとしまい込んだ

90日目

この思いは誰に託そうか

初めて書いた手紙だった
これまでの感謝とこれからの願いを
君と僕のこれからについての青写真を
想いの限り綴って書いた
だけど君は僕の前から消えてしまった
残ったのは僕の思いとこの手紙だけ

波よ、この思いを攫っていってくれ
波よ、この手紙を彼女へ届けてくれ

89日目

蒸し風呂のような体育館で
コートを駆け回る君だけが輝いて見えた
県大会を勝ち抜き地方大会に行って初めて会える君
こないだの冬は会えなかった、勝てなかった
この夏はまた君を見つけられたらいいな