“半袖”
私はもう十年以上半袖は着ていなかった
なぜなら、私の腕には
大きな火傷の跡が残っているから
私が半袖を着なくなったのは
小学生の時プールの時間に
ある一人の男の子が私の腕を見て
”わっ!お前の腕エイリアンみたい“
と笑いながら言われた
そんな一言から私は半袖を
一切着れなくなった
人を好きになっても
人に告白されても
ずっと自分の心に蓋をして
今まで一人で生きてきた
毎年一つ歳を重ねる度に思う事がある
“今年は半袖を着よう”
”ありのままの自分でいよう“と
そして毎年
袖の通されないままの
半袖のシャツが
クロゼットの引出しに
しまわれていく
30歳になった今日
今までの臆病な自分と
さよならする為に
一番華やかな花柄の半袖のシャツに
袖を通して
玄関の扉を開けよう
“さよなら、今までの自分”!
“あの頃の私へ”
今日で私も50代
いわゆる”アラフィフ“だ
今まで“四十肩”と呼んでいた
この肩の痛みは
今日から”五十肩“になるのだろうか?
こんなどうでもない事を考えていた
“人生100年時代”と
最近は言われているが
そうなると
今日が折り返し地点となる
どんな人生だったんだろう
10代の私は
とにかく好奇心の塊で
初めて人を好きになった
いわゆる”初恋“も経験した
もちろん“失恋”も
20代の私は
初めて海外にも行った
いろんな壁にぶちあたったし
大人の経験もした
初めてお母さんにもなった
30代の私は
覚悟を決めたて必死に生きていた
だからあっという間に
過ぎていった10年だった
そう!30代の締めくくりは
初めて”離婚“を決意した
40代の私は
出逢いと別れの時代だった
最愛の人との別れを経験し
最愛の人達との出逢いを経験し
いい意味でも、悪い意味でも
白と黒、天と地を
経験した40代
良く考えると
この折り返し地点まで
かなりのハイペースで走り続けた
そして50代
どんな50代を進んで行くんだろう
あの頃の私へ言いたい事は
“まだ、元気に生きていますよ”
私は考えた
この人生の折り返し地点から
先の人生を
良くも悪くもするのは自分次第
だから私はもう少しペースダウンして
毎日笑顔で生きていきたい
そして私が駆け抜けてきた
この道の沿道から
”頑張れ!“と声をかけてくれた人達に
今度はきちんと感謝を伝えながら
走っていきたいと思う
“ありがとう!私は今幸せです”と
”逃れられない“
私はいつになったら
あなたの幻から解放されるんだろう
なぜこんなにも胸が苦しいのだろう
振り向くとあなたがいるようで
振り向いてしまう自分
あれから5年も過ぎたのに
自分から別れを告げたのに
あなたを探してしまうのはなぜ?
あなたの優しさが辛くなって
あなたの“ごめんね”が聞きたくなくて
あなたから逃げだしたくて
あなたを忘れたかった自分は
何だったんだろう
あなたとの想い出が残るこの部屋に
今でも残っているあなたの優しさが
私にまとわりついて
あなたから逃れられない自分がいる
いつになったら
あなたは私を解放してくれるの?
いつになったら
あなたの笑顔を忘れられますか?
“また明日”
この忙しない日常で
僕が唯一癒やされる時間がある
働き初めて毎日立寄る珈琲店
店に入った時の香ばしい豆の香り
“いらっしゃいませ”の君の挨拶
毎日笑顔で声をかけてくれる
いつからか、君は
”おはようございます“と
僕に挨拶をくれるようになったね
僕は毎日同じ注文で
いつからか君は
“いつもので、よろしいですか?”
と別の言葉をかけてくれるようになった
そしてしばらくすると
君は”毎日お疲れ様です“と
労いの言葉をかけてくれるようになった
僕はいつからか
君の新しい言葉が聞きたくて
それが僕の日課になった
君は毎回“またお越し下さい”と
”いってらっしゃいませ“と
声をかけてくれているけど
僕は恥ずかしくて何も話せないまま
会釈だけしか出来なかった
でもね、毎回僕は背中越しで
“ありがとう。また明日”と
心で言っているんだよ
明日はちゃんと言葉に出せるかな?
”また明日“の言葉を
“理想のあなた”
あなたはいつも皆の中心で
あなたはいつも笑顔で
あなたはいつも楽しそう
あなたはいつもおしゃれで
いつも輝いていた
私はいつも羨ましかった
だから私は
あなたの髪形をまねしたり
あなたと同じ靴を買った
私の理想のあなたになりたくて
いっぱいいっぱい努力したんだよ
だけど何をマネしても
あなたにはなれない
マネはマネ
だから
私は私で良い
きっと真似じゃない本当の私を
好きになってくれる人が
この世界のどこかに
絶対いると思うから