おもてなし
どんぐりの実、赤い葉っぱのお皿に泥団子をのせてどうぞをする。
青い目のお客さまは大きく手を動かした。
「What is this?」
「わぁつー?」
首をかしげると、ちょっとだけお客さまは笑う。
「これわぁ、なんですかぁー?」
ぎこちない言葉に、ちょとだけくすぐったさを感じながらジョンさんに指して教えてあげる。
「これはー、おにぎり!これはー、なんか美味しいやつ!おかずー!」
びっくりしたようにジョンさんも人差し指を向けた。
「たべる?もぐもぐ??」
「ジョンさんがもぐもぐ!どーぞ!」
食べるようにジェスチャーをすると、ニコニコしたお客さま役のジョンさんが大きくうなずいた。
「Japanese!おもてなし!」
「いえーす!」
公園の中での小さな異文化コミニケーションを風が優しく見守っていた。
既読がつかないメッセージ
毎年、命日になるとLINEで語りかけることをやめられない。
僕にはどんな気持ちで亡くなってしまったのかも知らない、親友。
そのアイコンを見つめて、今年もどんな気持ちでお前の死を思ったか綴る。
いつかは、お前の笑顔も忘れてしまうんだろうか。
既読のつかないメッセージを指でなぞった。
秋色
この季節の色を纏うのが1番楽しい。
私には秋の色が服が似合うから、私の季節が来た気がしてしまう。
今年はいつまで秋色でいられるだろう。
願い事
自分の短冊を結ぶときに、チラリと見えた。
『女の子になれますように』の震えるような、不器用な文字。
その桃色の短冊のピンクの文字は隠れてるようにして目立たないように飾ってあった。
一段高い所に結んだ自分の短冊を見てから、解いてその近くに結び直す。
『みんなの願いが叶いますように!』
まだ見ぬ世界へ!
婚約者が死んだ。
事故だった。
最後に喋っていたのは私だった。
楽しく、旅行の話を携帯でしていた。
一緒に行くはずだった、旅行先のキャッチコピー。
『まるで天国のような世界をアナタも体感しませんか!』
ひとりで来た、タイの湖。
辺り一面、蓮の花がけぶるように咲きほこり、朝日に照らされている。
どこまでも、地平線までも続きそうな蓮の花と青い空。
(先に本物の天国に行ってどうするのよ、馬鹿)
静かに頬を濡らしながら決意する。
まだ見ぬ世界を、貴方の分まで体験することを。
世界はまだ感動に満ちていることを、この天国のような景色が教えてくれたから。