何もいらない。
ふと思うことがある。別に人生に困ってる訳でもないのに、どうしてか急に全てを投げ出したくなるような気分になる。
「聞いてよ〇〇!彼氏できた!!」
『まじで!?うわーいいなぁ』
彼氏だって、別にいらない。
マイナスな意見も、フレネミーも。
そして自分のこの投げ出したいとすぐに思ってしまう性格も。
空虚で仕方がない。だったら、
何もいらない。何も考えずふらふらと漂っていたい。それだけ。
《雪明かりの夜》
夜遅いこの時間に幼馴染から連絡が来た。
《コンビニ行こ〜!》
《夜遅いんだけど?》
《アンタが着いてきてくれるんじゃないの?》
俺は君のそういうところが好きで、仕方がない。
《雪降ってるから!》
雪…か。まぁちょっと気になるし、出るか…
「おそーい」
「遅くは無い、急に誘ってくるお前もお前」
そう話しながらコンビニへ向かう。幼馴染だけど高校は違う。
「ほんと、アンタと同じ学校にすれば良かったなぁ」
「やかましそうだけど?」
「はぁ!?」
「うるさい、いま夜」
そんなこと言われると思ってなかった。本当は、俺も同じ学校が良かった…とか言えばまだ良いのかもしれないけど。
無理だよ。言えない。
「てか寒〜!!」
「雪降ってるからな」
しんしんと雪は降っている。雨よりも慎ましく降っているこいつはきっと今回は積もらないだろうなとか考えながら歩みを進める。
12月。クリスマスも終わって年末ムード。でも今この時間だけは全てを忘れられる気がした。
「学校楽しい?」
「まぁ、それなりには」
「友達できて良かったじゃーん」
「お前は俺のなんなんだよ」
「"大事な幼馴染"かな〜?」
うん、分かってたよ。お前から見て俺はただの幼馴染だってこと。大事とか言うけどそれは俺もだし。
「んじゃ、付き合わせちゃってごめんね〜」
「…別にいいけど」
「おやすみ」
「…」
アイツは自分の家のドアを開ける。言うならここしかない。
雪が街灯や月に照らされて明るくなってるこの夜に。
「…あ、のさ!」
「俺、お前のこと…好きなんだけど…!!」
雪明かりの夜にはひとつの恋が芽生えた。
雪明かりの夜にはひとつの愛が芽生えた。
好きだよ。お前のことが。
私は彼が好きで、彼は他の人が好きだった。
クリスマスに大晦日…行事が盛り沢山で忙しい12月。
私は思い切って彼をイルミネーションに誘おうと思った。
私と彼はクラスが違くて、部活も違って帰り道も違う。だけど小学校から今の高校までずっと一緒で、腐れ縁に等しいけどずっと彼のことが好きだった。優しくて面白い彼のことが好きだった。
だから勇気を出して告白とかしてみようかなって、そんな単純な理由で。でもシチュエーションは大事かなって思ったから、イルミネーション。
うん、誘いに行こう。誘いが断られたらそこまでってこと。
私は彼の元へ向かった。そこには彼の好きな人がいた。
「あのね…!わ、わたしとクリスマスにイルミネーション、見に行きませんか…!」
先を越された。負けた。まぁ勝負なんてしていなかったしその土俵に立ててたかすら怪しいけど。
「いいの?俺で」
そう言ってるけど嬉しいくせに。
「うん!あなたと行きたいの…!」
ヒロインだなぁ、セリフが。私は彼らの居る教室の外で見えないように聞いている。こんなことバレたら気まずいのに。
「そっ、かぁ…へへ、嬉しい」
やっぱり、誘えそうにない。
「いつも喋ってる子はいいの?」
私のことかな。分かんないけど。
「あー…あいつは友達と行くだろ多分」
知らないのに、そんな適当言わないでよ。
「もし、もしだよ」
「うん」
「その子に誘われたらどうする?」
もう誘えない。誘わない。
「あいつは、誘ってこないよ…多分だけど」
そうだよ、それでいい。私だって柄にないことしようとしてた。
「…そうかな」
「そうだよ…ってほら時間大丈夫?」
「やばっ!そろそろ帰んなきゃ」
これ、隠れた方がいいな。いやそれとも、通り過ぎるとか。
無難に後者にしよう。
「送ってこうか?」
「いいよ!遠いから」
「でも…」
「いいの!!」
ほんと少女漫画みたいで、胸焼けしそう。
「…わかった、気をつけてね」
「うん!またね」
そう言って名前も知らない子は帰っていった。
私は彼のいる教室に入る。
「やほ」
「お前かよ」
こうやって軽く返してくれるのは私だけなのかも…なんて想像もして、虚しくなる。
「クリスマス空いてる?お母さんが来ないか、だって」
「お前は?イルミネーション行かねえの」
「行かないかな」
本当はアンタと行きたかったよ。誘いたかったよ。
簡単に、あの子みたいに誘えたらどれだけ良かったか。
「そ、俺行くんよね」
「…リア充かこら」
「リア充ではねえだろ、てかリア充判定ガバガバ」
私からは、そう見えちゃったんだよ。
「私の方を向いてほしかったのに」
「なんか言ったか?」
「言ってなーい、今からコンビニ行こ」
「なんでだよ」
「肉まん奢って」
「それこそリア充じゃねえかよ」
最後に、それっぽいことさせてね。
クリスマス当日、私は家から出ずにスマホを見ていた。
ピコンッ
そう音が鳴りメッセージアプリを開く。そこには幸せそうに笑っている彼と彼女がいた。
《彼女できた!!》
雪が降るホワイトクリスマスに私は失恋した。
クリスマスは確か神様の誕生日とかそんなんだった気がする。
そんなに信仰とかしてないというか薄いというか。
《おめでと!幸せになんなかったら許さんわ》
そう送ると、ポコッと了解のスタンプがきた。
次はいい人が見つかりますように。
そうやって、クリスマスに信仰しているかも分からない神様に祈りを捧げて。