檸檬

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私は彼が好きで、彼は他の人が好きだった。
クリスマスに大晦日…行事が盛り沢山で忙しい12月。
私は思い切って彼をイルミネーションに誘おうと思った。
私と彼はクラスが違くて、部活も違って帰り道も違う。だけど小学校から今の高校までずっと一緒で、腐れ縁に等しいけどずっと彼のことが好きだった。優しくて面白い彼のことが好きだった。
だから勇気を出して告白とかしてみようかなって、そんな単純な理由で。でもシチュエーションは大事かなって思ったから、イルミネーション。
うん、誘いに行こう。誘いが断られたらそこまでってこと。
私は彼の元へ向かった。そこには彼の好きな人がいた。
「あのね…!わ、わたしとクリスマスにイルミネーション、見に行きませんか…!」
先を越された。負けた。まぁ勝負なんてしていなかったしその土俵に立ててたかすら怪しいけど。
「いいの?俺で」
そう言ってるけど嬉しいくせに。
「うん!あなたと行きたいの…!」
ヒロインだなぁ、セリフが。私は彼らの居る教室の外で見えないように聞いている。こんなことバレたら気まずいのに。
「そっ、かぁ…へへ、嬉しい」
やっぱり、誘えそうにない。
「いつも喋ってる子はいいの?」
私のことかな。分かんないけど。
「あー…あいつは友達と行くだろ多分」
知らないのに、そんな適当言わないでよ。
「もし、もしだよ」
「うん」
「その子に誘われたらどうする?」
もう誘えない。誘わない。
「あいつは、誘ってこないよ…多分だけど」
そうだよ、それでいい。私だって柄にないことしようとしてた。
「…そうかな」
「そうだよ…ってほら時間大丈夫?」
「やばっ!そろそろ帰んなきゃ」
これ、隠れた方がいいな。いやそれとも、通り過ぎるとか。
無難に後者にしよう。
「送ってこうか?」
「いいよ!遠いから」
「でも…」
「いいの!!」
ほんと少女漫画みたいで、胸焼けしそう。
「…わかった、気をつけてね」
「うん!またね」
そう言って名前も知らない子は帰っていった。
私は彼のいる教室に入る。
「やほ」
「お前かよ」
こうやって軽く返してくれるのは私だけなのかも…なんて想像もして、虚しくなる。
「クリスマス空いてる?お母さんが来ないか、だって」
「お前は?イルミネーション行かねえの」
「行かないかな」
本当はアンタと行きたかったよ。誘いたかったよ。
簡単に、あの子みたいに誘えたらどれだけ良かったか。
「そ、俺行くんよね」
「…リア充かこら」
「リア充ではねえだろ、てかリア充判定ガバガバ」
私からは、そう見えちゃったんだよ。
「私の方を向いてほしかったのに」
「なんか言ったか?」
「言ってなーい、今からコンビニ行こ」
「なんでだよ」
「肉まん奢って」
「それこそリア充じゃねえかよ」
最後に、それっぽいことさせてね。

クリスマス当日、私は家から出ずにスマホを見ていた。

ピコンッ

そう音が鳴りメッセージアプリを開く。そこには幸せそうに笑っている彼と彼女がいた。
《彼女できた!!》
雪が降るホワイトクリスマスに私は失恋した。
クリスマスは確か神様の誕生日とかそんなんだった気がする。
そんなに信仰とかしてないというか薄いというか。
《おめでと!幸せになんなかったら許さんわ》
そう送ると、ポコッと了解のスタンプがきた。
次はいい人が見つかりますように。
そうやって、クリスマスに信仰しているかも分からない神様に祈りを捧げて。

12/25/2025, 11:19:24 PM